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西塚助手

グローリーヴェイズが香港で経過観察となった件の真相とは?


先週の日曜日、香港・シャティン競馬場で行われたクイーンエリザベス2世Cで、僕が所属する尾関厩舎のグローリーヴェイズが2着に頑張ってくれました。

レースでは出遅れましたし、少頭数で展開面も厳しかったのですが、最後は4分の3馬身差まで詰めてきてくれました。よく頑張ってくれたと思いますし、本当に香港とは相性が良いんですね。

そのグローリーヴェイズですが、レースの数日前に右前脚の跛行がみられたことで、現地主催者から出否について経過観察する、という判断がなされていました。この点は日本でも報道されていましたので、ご存じの方もいらっしゃると思います。

この発表を受けて、日本、海外ともにSNS上などで様々な憶測が飛び交ったようです。会員の方々、ファンの皆さんにはご心配をおかけしました。

結論から申し上げますと、グローリーヴェイズは馬房などから出る時に、その1歩目で右前を硬く感じさせる馬なんですよ。それを主催者が確認して、経過観察ということになったようなんです。

香港ではそのような形になりましたが、もし日本において同じ歩様がみられたとしても、普通にレースに出ていたはずです。というのも、日本では基本的に出走馬に対する事前の馬体検査は行われていないんです。

“基本的に"と言ったのは、たとえば跛行などで出走を取り消した次のレースに出走する時や、見舞金をもらってから復帰した時の初戦では『出走診断』という馬体検査を行うことがあります(※前記した2ケース以外にも出走診断が課せられるケースはあります)。しかし、装鞍所で歩いている段階から大きな跛行をしているなど、明らかな異常歩様となっているケース以外では、そのままゲートに向かうのが一般的です。

それに対して、今回のように香港を含め、アメリカやオーストラリアなどでは、このような事前の馬体検査が行われるんです。

あくまで個人的な推測ですが、この検査をする目的は3つあると思っています。①ファンの皆さんへの情報公開、②事故防止、それに関連する③動物愛護の3つです。特に香港では、一昨年(19年香港ヴァーズ)にグローリーヴェイズが遠征した直後くらいから、この検査がそれまで以上に厳しくなったようなんです。

このチェックはけっこう徹底していて、まず遠征する前に馬の動画を送らなければなりません。しかも、硬い地面でダクを踏ませた動きを送るように、といった感じで、かなり細かい情報を要求されます。

率直に言うと、その動画でも出がけの1歩目の右前は硬さを感じさせていたんですよ。ですから、経過観察はあるかもしれないな、と個人的には思っていたんですよね。

確かに、僕が推測したような理由を考えると、日本でもこのような検査をやるべきだ、という意見もあるかもしれません。

ただ、日本でそういった検査を行わない理由のひとつとして、騎乗者の感覚を尊重する、ということがあるのではないか、と思います。レース前に装鞍所でチェックは行われますが、基本的にはパドックで騎手が跨がって、返し馬を行い、そしてゲート裏で判断するという流れになっています。

実際、皆さんも“ゲート裏で馬体に異常が認められたために、競走から除外します"というアナウンスをお聞きになったことがあるのではないでしょうか。それは、乗っている騎手が“おかしい"と感じたからです。

日本のシステムの良いところは、その馬に携わってきた人間や、騎手の感覚を尊重して、最終的な判断をさせてくれることです。今回のグローリーヴェイズでも、こちらとしては大丈夫だと思って送り出していますし、実際に競馬でも頑張ってくれました。今回のケースでも、乗っていたK.ティータン騎手はもちろん、調教助手も“歩様は問題ない"と答えるはずです。

確かに、レースで怪我をしてしまうリスクを考えると、少しでも慎重に、という考え方もあると思います。歩様は馬の状態を見極める大切な要素ですが、グローリーヴェイズのように、それぞれの馬に特徴がありますし、独特の歩様でとても走れないんじゃないか、と思えるほどの馬が、何事もなく競馬で勝ってしまうケースもしばしばあります。

どちらが良いのか、と聞かれると、それぞれの意見があると思いますが、現場で馬に携わっている僕の立場としては、日本のスタイルの方が現実に即していると思っています。

最後に、以前何度かお話ししたレディアイコについて、気になっている方もいらっしゃると思いますが、そろそろ放牧から戻ってくることができそうです。今週、僕も放牧先の育成牧場に行ってきました。その時の話は、改めてご報告させていただきます。

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