西塚助手
スルーセブンシーズから最初に受けた衝撃を信じて、オークスに送り出します
先週はヴィクトリアマイルが行われました。単勝1.3倍という圧倒的1番人気に応えて圧勝したグランアレグリアは、本当に強かったですね。
僕自身、今回のような1本かぶりの人気馬がいる時は、その馬がそれだけの信頼に足り得るのかどうか、付け入る隙がないのかをよく観察するようにしています。その判断基準というのが、調教やローテーション、あるいはそれまでのレースぶりなどです。そして今回は、グランアレグリアが1頭抜けた存在で仕方がないかな、と感じていました。
前にも何度か話をしていますが、以前のグランアレグリアといえば、掛かる面を見せたり、気性面での危うさを感じさせていましたが、それが今になってだいぶ解消されています。それはレースだけでなく、調教場でみせる姿からも感じるんです。
それだけの成長を見せた理由を僕なりに推測すると、19年NHKマイルCで1番人気ながら5着(4位入線降着)に敗れてしまって、そこから7ヶ月半の休養を挟んだことが大きかったんじゃないか、と思うんですよ。
上のクラスに上がっていく馬の多くは、元々の素質があるのはもちろんですが、その力を発揮できるようになるためには肉体面、精神面での成長がなければいけません。
高い能力を持つ馬でも、成長途上で大きく負けたりすることは当たり前のようにあるんです。3歳で結果を残せなくても、古馬になって結果を出すようになる馬は当たり前のようにいて、それは未勝利馬にも言えることです。
これは僕自身も経験したことですが、適切な時期に休ませてあげることは本当に大事で、精神面はもちろん、身体的な成長を促すことになります。これは尾関厩舎で携わったサクラゴスペル、レッドファルクス、そしてグローリーヴェイズもそうです。
ですから、NHKマイルCで負けてしまったままだったら、いまのグランアレグリアはないんじゃないかと。あそこが休ませる適切なタイミングで、そこで成長が促されたことが今に繋がっていると思えるんですよね。
逆に、数多くのレースを経験することで良くなっていく馬もいます。何が良いのかは馬によって千差万別で、その馬がどういうタイプなのかを適切に見極めなければいけません。それには、携わるすべての馬を注意深く観察することが大事だと、改めて痛感しました。
ところで、ヴィクトリアマイルには僕が所属する尾関厩舎のアフランシールも出走していました。16着という結果にはなりましたが、このメンバーを相手に、勝ち時計1分31秒0という速いタイムで決着したことを考えると、現時点では頑張って走ってくれたと思っています。
レースを経験し、適切な時期に休養を挟みつつ成長していってくれれば、このような強いメンバーが相手のレースでも好勝負できるようになってくれるのではないか、と期待しています。
さて、今週はオークスが行われます。尾関厩舎からもスルーセブンシーズが出走予定です。
以前、このコーナーで“興奮を覚える馬との出会いがあった"という話をしました。今になって言わせていただくのですが、その馬こそがスルーセブンシーズなんですよ。
今回のレースに向けて帰厩した時に久しぶりに乗りましたが、ギアの上がり方や加速力は、いままでに感じたことがないほど。ひと口に“良い馬"と言ってもいろいろなタイプがいて、力強さがある馬もいれば、“ゴムまり"と表現されるようなバネを感じさせる馬もいますが、スルーセブンシーズは抜群の瞬発力があるタイプの“良い馬"だと思います。
状態も良いですし、登録当初は抽選と思われていましたが、現状では出走できることになったようです。何とか上位に食い込んでいってほしいと思っています。
出会った当初に受けたあの衝撃は、間違いなく能力が高ければこそ。G1でもやれると信じて、良い状態で送り出せるように、全力で頑張ります。応援を、よろしくお願いします。
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