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速攻レースインプレッション

血統通りの馬もそうでない馬も…どちらもいるから競馬は面白い

文/出川塁、写真/森鷹史


桜花賞を7番人気のスターズオンアースが制したこともあり、二冠目のオークスは大本命不在というのが戦前の評価だった。

1番人気は2歳女王のサークルオブライフで、最終的な単勝オッズは3.2倍。続いて忘れな草賞を快勝したアートハウスと桜花賞馬スターズオンアースが6.5倍で並び、票数の差で前者が2番人気に。以下、4番人気のナミュールが7.1倍で、ここまでが単勝10倍以内。さらに9番人気のベルクレスタまでが単勝20倍以内に収まっており、全体的に下馬評通りの拮抗したオッズとなっていた。

また、この週末から東京競馬場は観客の上限が約7万人に増えた。昨年デビューした3歳馬にとって、これだけの人の前で競馬をするのは初めてのことになる。だからではないだろうが、レース直前には他馬に蹴られたサウンドビバーチェが放馬するアクシデントが発生し、発走が10分以上遅れることになった。

まだ大きな声を出すのはためらわれる状況ではあるが、どうしたってスタンドはざわつく。しかも、東京芝2400mのスタート地点はその目の前にある。ここで予定外に待たされた影響が出た馬がいても不思議はなく、実際、ゼッケンの下に発汗が目立つ馬も何頭かいた。

そのうちの1頭がサークルオブライフだったのだが、果たして、ゲートが開くとダッシュがつかず最後方からの競馬となってしまう。差しタイプの馬とはいえ、さすがに思い描いた展開ではなかっただろう。直線でも精彩を欠き、何頭かかわして⑫着に入るのが精一杯だった。2番人気のアートハウスも同様で、ゲートは出たものの外にフラつき気味。道中は3番手を進んだものの、最後のひと押しがなく⑦着に敗れた。

人気の2頭が実力を発揮できずに敗れた一方で、狭いところを割って出た桜花賞に続いてメンタルの強さを見せつけたのがスターズオンアースだ。オークスではもっともスタンドに近い18番枠となったが、まったく動じることはなかった。五分のスタートから中団の外目を落ち着いて追走。8番手で4角を回って直線に向くと、ルメール騎手のアクションにしっかり応えて前の7頭をすべて差し切った。クラシック本番まではなかなか勝ち切れずに1勝馬の身だったのに、わずか1ヵ月半後には史上16頭目の二冠牝馬に上り詰めることとなった。

この抜群の成長力を裏付けるのが血統だ。祖母は2009年のディアヌ賞(仏オークス)勝ち馬スタセリタ。その2番仔にしておばにあたるのが2017年のオークス馬ソウルスターリング。そして今年のスターズオンアースオークスには滅法強く、この3勝ではいずれもルメール騎手が手綱を取っている。今回は川田将雅騎手からの乗り替わりで臨むこととなったが、必然であったとさえ思えてくる。

10番人気ながら②着に健闘したスタニングローズもまた、オークスとは浅からぬ縁のある血統の持ち主である。3代母のロゼカラーが1996年の④着馬で、祖母のローズバドは2001年の②着馬。これもまた血統にふさわしい激走だった。

多くの活躍馬を送り出してきた「薔薇一族」にとって初のクラシック制覇は持ち越しとなったが、スタニングローズも重賞初制覇のフラワーCからの充実ぶりが著しい。阪神JFから秋華賞にかけての2~3歳牝馬路線では、力関係があまり変わらないまま同じ馬によって争われる世代も少なくない。しかし今年は、3歳春の二冠を戦いながらどれだけ成長できたかが争点となった印象を受ける。ひと夏を越して、秋にはどんな構図が描かれるのか。各馬の成長度合いをしっかりと見定めたいところだ。

そして、③着にはナミュールが入った。「そして」の部分に力みが感じられる文章になってしまっているのはハービンジャーマニアだからだが、桜花賞⑩着からひとまず巻き返しに成功した。同じくハービンジャー産駒で桜花賞⑪着のプレサージュリフトも⑤着と掲示板を確保している。前回担当した桜花賞のインプレでつい熱くなってオークスの逆襲は必至的なことを書いてしまったが、なんとか格好はついたのではないかと胸をなでおろしている。

ハービンジャーにかけては冷静になれないだが、この2頭の間の④着に入ったピンハイを見落としてはいない。デビューから馬体重が減り続けて今回は402キロでの出走となったが、ゴール板まで脚を伸ばしてあわや馬券圏内まで迫った。この小柄な体に加え、父ミッキーアイルという血統を思えば感動的だ。血統通りに走る馬もいれば、血統を超越したような走りを見せる馬もいる。どちらかだけではなく、どちらもいるから競馬は面白い


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