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速攻レースインプレッション

今年も現役最強クラスが強さを示す一戦となった

文/出川塁、写真/森鷹史


宝塚記念といえば、惜敗続きの馬がG1初制覇を達成する舞台。キャリアのあるファンほどそんなイメージを持っているかもしれない。メジロライアンやマーベラスサンデー、メイショウドトウにダンツフレームといった馬たちが悲願を成就させたのがこのレースだった。

ところが、ここ10年ほどの勝ち馬の顔ぶれを眺めると、そういう存在は意外と見当たらない。G1初勝利だったのは2015年のラブリーデイ、2018年のミッキーロケットと2頭いるが、いずれもG1で③着以内に入ったこと自体が初めてで、「ついに!」という印象は薄い。

過去10年でいちばん雰囲気が近い宝塚記念馬を探すと、すでに香港ヴァーズで海外G1を勝ってはいたものの、2017年のサトノクラウンではないか。2歳時から高く評価され、5歳でようやく国内G1に手が届いた。余談になるが、この勝利の有無は種牡馬としての評価にも影響し、初年度の繁殖牝馬のラインナップも多少は違っていたはず。仮にタスティエーラの母との交配が実現しなかったとなれば今年のダービーの結果も変わっていたわけで、歴史は本当に紙一重だ。

それはさておき、古き良き宝塚記念が今年よみがえる可能性はあった。ディープボンドが先頭でゴール板を駆け抜ければ、それはまぎれもなく悲願のG1初勝利となる。当日の阪神芝ではキズナ産駒が3勝を挙げるなど絶好調で、馬場傾向もこの馬にとっては悪くないように見えた。

結果はといえば、昨年からひとつ着順を落として⑤着。とはいえ、勝ち馬とのタイム差は縮め、最後まで頑張って伸びていたように実力はちゃんと発揮している。こういう馬が一矢報いていた昔の宝塚記念だったならばと、思わずにはいられない。

むしろ近年は、現役最強クラスが圧倒的なパフォーマンスを見せつける春競馬の総決算、という意味合いが年々濃くなってきている。2019年のリスグラシューはここから年度代表馬にまで上り詰め、2020&21年はクロノジェネシスがそれぞれ6馬身差、2馬身半差で連覇を達成。昨年もタイトルホルダーが横綱相撲でレコード勝ちを決めている。

となれば、今年は世界ランキング1位に輝くイクイノックスの出番だろう。今季初戦のドバイシーマクラシックを楽々と逃げ切ったあとの帰国初戦。初の関西圏でのレースでもあり、調整は決して簡単ではなかったはずだ。しかしながら、レース3週前から栗東に滞在し、発表された当日馬体重は有馬記念と同じ492キロ。もちろん数字だけで状態を判断できるものではないが、安心できる材料がひとつ増えたのは間違いない。

もっとも、ゲートが開いてポジション争いが一段落したところで、イクイノックスが収まった位置に冷や汗をかいたファンは多かったことだろう。ユニコーンライオンアスクビクターモアドゥラエレーデなどG1実績を持つ逃げ・先行馬が揃い、前が速くなりそうなメンバー構成といっても、後ろから2頭目は心臓に悪い。この週末の阪神、特に日曜の芝は逃げ残りも目立ったからなおさらだ。

1000m通過は58秒9。やはりハイペースとなった。とはいえ、阪神の内回りでいつまでも後ろでジッとしていては届かない。まず動いていったのが武豊騎手との新コンビで臨んだジェラルディーナ。近年の宝塚記念で実績を残す前年のエリザベス女王杯勝ち馬が外から一気にポジションを押し上げていく。

それに合わせるかのようにイクイノックスも進出を開始。いかんせん、その内にいた天皇賞馬ジャスティンパレスも動き出した関係で、4コーナーではかなり外を回ることになってしまった。誰の目にも距離の損は明白だ。

しかし、それもこれも世界一の脚を引き立てるための演出にすぎなかった。直線に入ってからの脚はいささかも衰えることなく、抜け出しにかかったジェラルディーナを簡単に捕まえて先頭へ。ゴール寸前、最後方から急襲してきたスルーセブンシーズの追い上げも危なげなく封じ、G1レース4連勝とともに10億円ホースの仲間入りを果たした。

どこからレースを進めても、最後は必ず抜群の末脚を繰り出してくる。もはや「脚質イクイノックス」とでも言うしかない稀に見る自在性で、負けるパターンがちょっと思いつかない。果たして秋はどんなキャンペーンになるのだろうか。どうせなら過去に日本馬が挑戦したことのないレースを選んでほしい。無責任な外野の意見にすぎないが、そんなことを思ってしまう。

しかし、イクイノックスが盤石ではあったものの、タイム差なしの②着まで迫ったスルーセブンシーズの追い上げも見事だった。ドリームジャーニーの産駒で、今回テン乗りの池添謙一騎手は父とのコンビで2009年の宝塚記念を制している。ノーザンF系クラブ馬で池添騎手への乗り替わりは、最近のG1で成功例が見られるパターンで、今回も勝負強さを示した。

③着にはゴール寸前でジェラルディーナをかわしたジャスティンパレスが入った。ということは、前走ルメール騎手で重賞①着だった3頭が馬券圏内を占め、継続騎乗したイクイノックスが勝利。終わってみれば簡単なのだが、それをレース前に気づくことができるかといえば、また別の話なのである。


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