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西塚助手

【対談・小島勝三助手④(終)】手のかかる馬に多く乗ってこそ、技術は身につく


小島勝三調教助手…以下[小]
西塚信人調教助手…以下[西]

[小]話は変わるけど、信人が西塚先生のところにいたときのことももちろん覚えているんだけど、実はいまの尾関厩舎に行ってからの方が、俺の中では印象強いんですよね。

[西]えっ、なんでですかね? 西塚厩舎時代にも、ゲート試験を一緒に受けていただけませんかと、よくお願いに伺ったりしていましたよね。

[小]そうだったんだけど、何て言うのかなぁ、同じような境遇じゃないですか。父親が調教師で、そこで働いていて。それで厩舎が解散してよその厩舎に移って、雇われて頑張っている姿を見て、偉いなあ、と思って見ていたんですよね。

[西]そんな。ありがとうございます(笑)。

[小]いつも笑顔で、元気に働いていて、本当によく頑張っているなぁと思っていますよ。

[西]そういう意味では、今回小島先生が定年になって違う厩舎に行かれたわけですけど、どうですか? あ、先に言わせていただきます。変な言い方になってしまうかもしれませんけど、気持ち的には楽じゃありませんか? 僕自身は、比べものにならないくらい、楽になったのが本音でした。

[小]気持ち的には本当にそうです。

[西]肩の荷が降りたような、スッと軽くなるような感覚じゃないですか。

[小]まさにそういう感じかなぁ。それまでは社長が自分の父親で、そこから急に全く違う人の下で働くことになるわけですから、相当厳しいんだろうなぁと想像する部分があって、だからよく(西塚助手を)見ていたということもあったんですけどね(笑)。

[西]僕も同じように思いましたよ(笑)。でも、違うんですよね。もちろん仕事が楽とか厳しいとかじゃなく、自分がやるべき仕事は全力でやるんです。ただ、その気持ちの部分での違いは感じます。

[小]他人だからこその厳しさもありますけど、身内だからこその厳しさというか、そういう部分はあると思います。

[西]ブッチゃけさせていただきますけど、西塚厩舎時代は毎週競馬が終わるととても憂鬱でした。競馬はほとんどが負けるわけですけど、その言い訳をその度にしなければならないわけですよ。その憂鬱さと言ったら。『馬鹿野郎、何をやっているんだ』と怒鳴られることもあれば、『ダメだね』と冷たく電話が切れることもありましたし、いま思い出しても憂鬱になりますよ(苦笑)。それをしないだけでもどれだけ楽なことか。

[小]馬主さんや牧場の方々とも連絡を取らせていただいていましたが、そういう機会が減ると、やはり気持ちの面での違いを感じます。

[西]あと、勝三さんの場合は、それこそ考えて、考えて、考えて、やってみて、結果が出ないときには、言われるわけですよね。それが他人と身内では、逆に身内の方が厳しい面というのがあるはずですよ。そうやってみると、自分の父親の厩舎で働いていて、その後によそで働いている人たちは、楽しくしっかりとやっている印象があるんですよ。

[小]確かにあるかもしれません。馬主さんや牧場の方々というのは、調教師にとってお客さんになるわけで、そのお客さんの声に直接触れなくなりますので、全然違いますよね。

[西]そう。お客さんの声がダイレクトに来ないというのは、それだけで気分が違うというのが僕自身としての本音です。あ、そうだ。ぜひ聞きたかった馬を1頭忘れていました。プレシャスカフェです。

[小]メチャクチャ思い出深い馬です。加賀先生のところから、父のところに助手ではなく持ち乗りとして移動したんですけど、そのときに担当させてもらったんです。デビュー戦を勝って、2戦目から担当していたんですけど、レース中に骨折してしまってね。その後、助手になってからも何度か乗せてもらったんですけど、とにかく引っ掛かりました。それこそ、いま流行の"半端ない"くらい。

[西](笑)。確かハートレイク産駒でしたよね。珍しい血統という印象がありました。

[小]とてもサラブレッドとは思えないくらい首が太くて、もの凄い力があったんですよ。普通キャンターの時にチップの部分で止められませんでしたから。

[西]良太さんでもダメだったんですか。

[小]兄貴だと大丈夫でした。残念ながら、全然技術が違うということですよ。

[西]勝三さんから見て、良太さんのどういうところに技術の高さというか、上手さを感じるんですか?

[小]わかりやすいところで言いますと、引っ掛かる馬を上手に抑えることができるんですよ。

[西]それは力だったりするんですかね?

[小]力なのかなぁと思ったこともありました。ただ、トレセンには他にも引っ掛かる馬を上手く乗ると言われる方々がたくさんいます。

[西]確かに、たくさんいらっしゃいますね。

[小]その人たちをよく観察していると、軽い感じで乗っている人たちが多いんです。でも、兄貴はそれをやらないんです。引っ掛かる馬を普通キャンターで乗って、それで行かせないんですよね。出しながら、抑えるような感じで乗っています。軽くして、気を逸らすなどしてごまかしながら乗るんじゃなくて、コンタクトをしっかりと取りながら、しっかりと抑えて乗っているんですよね。

[西]引っ掛かる馬の対処法のひとつとして、いい意味でぶん投げて、抜くというのがあって、そうするとポコポコと行くことができます。そこで持っていかれてしまうと大変なんですけどね。

[小]あとは最初からハッキング程度の感じで、1周する方法ですかね。それで何とか行かないようにする感じですか。

[西]どちらかに向けて、気持ちをそらせて、ですね。

[小]でも、それをしないんですよ。普通キャンターで、行かせずに乗ってくるんです。簡単に言えば、ギアを抜かずに、入れた状態でしっかりとコンタクトをとって、乗ってくるんですよ。

[西]それは凄いですね。なぜできるんでしょうね。

[小]それはいまでもわからないんですよ。

[西]これは最近思っていることなんですけど、よく乗っている格好で上手下手ということが言われるんですけど、あまり格好が良くなくても上手な人がいます。それは一緒に働いてみないと分からなかったりするんじゃないかと思うんです。

[小]それはありますよね。いま新しい厩舎になって、尾形充弘厩舎で助手をやられていた田中さんと一緒に働かせていただいているんですけど、改めてその技術の素晴らしさを痛感しています。

[西]それですよ、それ。一緒に働いてみて、わかる部分ってありますよね。

[小]トレセンでも上手な1人として言われていましたし、元々上手なことはわかっていました。ただ、一緒に働いてみて、経験値と引き出しの多さ、そして何よりいい馬を本当によく知っていることを改めて痛感させられるんです。

[西]逆に、手のかかる馬ばかりに乗っている人の技術力というのもあると思いませんか?

[小]そうなんですよ。田中さんとか兄貴を見ていて思ったのは、例えば乗りやすい馬がいたときに、自分だったら『乗りやすい馬』という感覚しかなかったりするんだけど、2人はその馬をさらに前に出るようにしていく感覚があるんですよね。先程の話じゃないけど、軽く乗ってごまかすのではなく、しっかりと前に出すようにして、なおかつ行かれないようにする。だから、馬が良くなっていくんだと思うんです。

[西]なるほど。確かに、どこかで自分たち人間にとって、乗りやすいと思う方向にしていこうとする意識が先行してしまいがちだったりします。

[小]それ、それ。多くの人たちがそうだと思いますよ。でも、2人を見ているとしっかりとハミを噛ませて、前に出しながら、しっかりと抑えているんですよ。あそこに技術力があるように思います。

[西]まさに技術でしょうね。でも、そういう部分について、言われることも少なくなりましたし、もっといえば必要とされなくなりつつある部分もありますよね。

[小]でも、そこの部分こそ大事だし、馬にとっては必要不可欠な部分だと思いますけどね。今日も一番で田中さん、二番で兄貴と併せ馬をしたんですけど、アブミを持っていかれてしまいそうにはなるし、同じ70-40だったとしても、厳しさが違います。馬に対する負荷やプレッシャーが明らかに違うのが、隣で乗っていて痛感させられました。楽に乗れるけど、投げて楽乗りなんて絶対にしないんですよ。

[西]なかなかできることではないですよ。でも、一緒に働いているからこそ、それが実感できるわけですからね。

[小]本当にそうなんですよ。

[西]それってセンスなんですかね?

[小]違うんじゃないかなぁ。昔はそうやって育てられたんだと思いますよ。

[西]良太さんもそうやって育てられたということですかね。

[小]祖父のところで育てられましたので、そうやって鍛えられたんでしょうね。田中さんも、そうやって厳しく育てられたからこそ、いまの技術があるんですよ。

[西]でも、本当の厳しさというのはそういうところなんだと思います。

[小]逆に言えば、本当に高い技術というのはそうやって鍛えられないと身に付かないものなんだと思います。あとは、そもそも良い馬というのが少ないわけですから、そちらに合わせてしまってはこの馬の仕事はダメなんでしょうね。手のかかる馬たちに乗って、しっかりとコンタクトを取って頑張り続けることで技術が身に付きますし、引き出しの数も増えていくんだと思うんですよ。

[西]いやあ、まだまだ話をしていたんですけど、もうこんな時間になってしまいました。最後に、今後の目標などありましたら、お聞かせください。

[小]正直、まだ一杯一杯ですよ。ただ、新しい厩舎になって、これまで以上に頑張って、何とか良い結果を出していこうという気持ちです。

[西]本日はお忙しい中ありがとうございました。またぜひよろしくお願いいたします。

[小]ありがとうございました。



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