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西塚助手

未勝利戦を勝てるかどうかは、人間の力にかかっていると思うんです


関東では今週で新潟開催が終わり、来週から中山開催となります。ということは今週で通常の3歳未勝利戦が終わり、スーパー未勝利戦(※前走⑤着以内か出走回数5回以内の馬のみ出走権がある未勝利戦)が始まるわけです。

去年の夏くらいから2歳馬たちが次々と入厩してきて、ここまで競馬をしてきました。勝てなければ今週でお別れになる馬もいるわけですが、改めて考えてみると、やはり感情的になることもあります。

勝負の世界ですから、甘いというご批判もあるのかもしれません。しかし、ここまでずっと接してきたわけですから、一緒に戦ってきた戦友のような感覚が生まれるのはある意味自然なことだと思います。

この仕事を続けていれば慣れるんじゃないか、と言われることもあります。しかし、もう10年以上この仕事をしてきましたが、全く慣れることができないんですよね。

だからこそ、何とかひとつ勝たせたい、と思うんですよ。

以前話をしたレディボロニヤのように、地方へ行く選択肢はもちろんアリですし、ひょっとしたらその方が馬にとっては良い場合もあるのかもしれません。

でも、ひとつ勝ちさえすればJRAに残って走り続けることができるわけです。そうすることで、違った部分が見られるんじゃないか、とも思うんです。すべての馬に、そういう可能性があると思うんですよね。

しかし、いろいろな要因によって、それぞれの馬が持っている100%の力を引き出せない、もしくは夏の新潟に何らかの事情で間に合わないこともあると思っています。それは時間の制約だったり、ルールの問題だったり、そして馬自身のコンディションだったりします。

そこで、我々もどうにかして間に合わせようとします。そうなれば無理して追い切りをかけたり、枠の問題で出走できるかどうかわからない状況で追い切りを行わなければならないことも出てくるんです。

この時期は最後のクールになると8時半くらいに馬場に入っていく感じで、その時点で気温が30度を超えている場合もあります。僕自身も暑さで辛いんですけど、馬も辛そうなのがこちらに伝わってくるんです。

そういうことを続けることで、先程も言ったように戦友みたいな感覚になるわけです。「少しの間だから、あと少しだから一緒に頑張ろう」と、心の中で思わずにはいられないんですよね。

これはホースマンだからではなく、人間として自然に抱く感情ですし、この気持ちはなくしてはいけないと思うんです。

ブッチャけさせていただきますけど、中にはどれだけ頑張っても"今の状態では厳しいだろう"と思う状況もあるんですよ。それで勝つ馬もいるわけですし、出走するからには勝つために全力を尽くすんですけど、送り出すときに心が痛いこともあります。

例えば、春先に強いメンバーを相手に②、③着に入っていた力があるのに、その半分も発揮できないくらいに疲れてしまっている馬もいます。当然、それだと勝つことは難しくなりますよ。

当たり前ですけど、馬は生き物で、その状態を完全に人間が思い通りにすることはできません。

でも、これは僕自身が思っていることなんですけど、未勝利戦を勝たせることができるかどうか、それだけは人間の力にかかっていると思っています。

決して思い上がっているのではなくて、その馬が一番良いときに、いかにスムーズに勝たせることができるか。たとえ勝てる実力があっても、勝てずに終わることは皆さんが思っている以上にあるんですよ。

一方で、その逆もあります。ウチの父が健在のとき、西塚厩舎でお預かりしていたハナタツマキという馬の話をしましょう。

確か当時(04年)はスーパー未勝利がなくて、3歳未勝利戦は4回中山まで行われていたはずです。ハナタツマキは4回中山3週目に③着に負けてしまったんですけど、その直後、あまり馬主さんにお願いごとをしない父が『最後に連闘させてください』と電話をしていたことを覚えています。

そこでハナタツマキは中山最終週に連闘することになり、そして勝つことができました。この判断がハナタツマキを西塚厩舎に残すこととなり、その後15頭立て14番人気で500万を勝ち、単勝万馬券(※214.2倍)の大波乱を演出することもできたんです。

そういうこともあるわけですから、自分は『勝たせられないのは自分の力が足りないからだ』と考えながら仕事をしています。

冒頭で話したように、今週で通常の3歳未勝利戦は最後です。そこに出走する馬たちは我々人間のいろいろな思いを背負って走っているということを心の片隅において、今週のレースを見ていただければと思います。

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