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西塚助手

【対談・武士沢騎手④(終)】日本独自の制度ができれば、エージェントはあっていい


武士沢友治騎手…以下[武]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]そういえば、ある馬主さんのブログで、武士沢騎手はとても丁寧に説明してくれる、という話が載っていたんですよ。

[武]自分自身、結果云々というよりも、馬のどこかひとつ良いところを見つけて、そこを伸ばしていってあげられるように、レースに向けてやっていきたいと思っているんです。ですから、走る馬についてどうかと聞かれれば普通に「走る」と答えますけど、みんなから少し低く見られている馬について聞かれたときには「この馬は走ってきますよ」という言い方をします。その言葉がどう受け止められているかは分かりませんけど、馬のことを考えて話をしているつもりです。

[西]でも、それが本来あるべき姿だと思いますし、そうしないと結局のところ、良い馬をダメにしてしまう可能性があるんですよね。

[武]この前、ファンの方に、"武士沢さんはどうしてゲートを遅く出ることが多いんですか?"と聞かれたことがあったんです。全部が全部でないことは言わせていただいた上で、ゲートを出してしまうことで、次は悪くなってしまう馬がいる、ということを説明したんです。

[西]それこそ、ゲート試験に受かったのではなく、受からせてしまったというやつですよね。

[武]それですよ。

[西]このコーナーでも以前話をしたのですが、レディボロニヤという馬は受からせてしまったケースでした。デビュー戦で、蛯名さんが出さずに馬のリズムで行ってくれて、そこからも徐々にやっていくことができたので、大井に移籍した今でも大きな問題を起こしていないんです。

[武]ゲートを悪くしてしまうのは本当に簡単ですよ。受からせてしまった状態で、1回ゲートを出して行けば、それで悪くなってしまいます。ゲートは苦しいという意識にさせてしまうわけですよ。もちろん、その中で常に勝ちたいと思って乗ってはいますが、ゲートが安定してくるまで我慢しようと思って大事に乗ります。何度か経験して、ゲートを出しても大丈夫というときになったら、出していきます。

[西]以前、入らない馬がいたんです。あるタイミングで回すと入るんですけど、中も怪しい。しかし、そういう馬だから出るのは速いんです。

[武]悪くて速いか、悪くて遅くなってしまうか、それぞれのケースがありますよね。

[西]その馬は速かったんですけど、入って、駐立までを練習していたんです。そうしたらだいぶ良くなっていって、最悪の場合は、左回りに促すと入るという段階で、若い騎手が乗りました。

[武]はい、その時点でダメですね。

[西]中で後ろにモタれていたので出ていかないかな、と思ったんですけど、タイミングが合ってゲートから出してしまいました。結果として着には来て、また2、3週後に同じようなレースをしました。そうなってしまうと、もう次は入らなくなってしまって、それから本当に大変な思いをしました。もし武士沢さんならば最初から出していかないで、それでも2、3着に来ていただろうな、と思ったんですよ。

[武]それはどうかわかりませんけど、危ないとは感じたはずです。まあ、入らない程度ならまだいいですよ。ただ、入らないために出走停止1ヶ月になるよりは、無理せず走らせ、それで勝ったら最高という感じで、権利を取りながら、馬に合わせて競馬をしていく。そのどちらが良いかということですよ。



[西]出走停止になることの重大さというのは、なかなかファンの方々には分かっていただけないかもしれません。

[武]プロの騎手ですけど、あの狭い空間で、馬に暴れられたときの感覚は我々にしか分からないでしょうね。1馬力にはどうあがいても勝てません。しかも馬は機械ではないので、感情もあれば、パニックにもなるんです。

[西]パニックになった馬は本当に危ないですよ。

[武]ゲート前でパニックになってしまった馬は、本当に何をしでかすかわかりません。レース中に故障する馬というのは、ゲートに入る前に嫌な雰囲気を出すものなんです。感覚的なことなんですけど、"あっ、ヤバイ"と思うと、本当にそうなってしまうことがあります。

[西]以前、返し馬の1歩目で危ないかどうか分かると聞いたことがあるんですけど、それは普段から乗っているから、という部分もありますよね。

[武]確かに返し馬は分かりやすいんですけど、それでも分からないケースがあります。いずれにしても、やはりそれまでに乗っている馬の方がいいですよね。でも、そういう馬でも、次は乗れないこともあるんですよ。

[西]乗り替わりですけど、誰にでもある話ですよね。

[武]一流の人でもありますから。馬主さんの馬ですから、いくら乗りたくても思い通りにはいかないですよね。

[西]そうなんですけど、割り切れるものですか?

[武]割り切れないとね。引きずってどうしますか。来るものは拒まず、去るものは追わずなんですよ。正直、競馬というのはその思いが欠けてしまってはダメなものだと感じます。例えば、厩舎陣営がいけると思っていても、オーナーサイドがあの騎手ではダメと思っていると、やはり良い結果は出ないと思います。みんなの思いがひとつになったときに、良い結果が出るように感じます。もちろん、乗り替わりをすることも必要だし、それで良い結果を生むこともあると思いますから。

[西]そこは上手い下手とかいうレベルの話ではなくて、ですよね。

[武]違う人が乗ることで新しい一面が見えることもあると思います。自分自身、それはそれでいいと思いますけどね。

[西]そういう部分での心のバランスの取り方とかは、年齢を重ねて変わるものですか?

[武]それはあります。若いうちは、のたうち回るほどストレスが溜まることがありました。冗談抜きで、本当にもう言葉にできなくて、のたうち回るしかない感じなんです。それが未勝利とか500万とか関係なくて、勝ちたい。10着、10着、そして2着で、一気に変わり身を見せたと思ったら、次は違う人というときは、もうのたうち回りました。でも、それが今は冷静に考えられるようになったかなぁ。

[西]それは冷めてしまったわけではなくて、ということですよね。

[武]もちろんです。情熱がなくなったわけではないですし、当然勝ちたいですよ。その馬と同じレースになったときには、人気がなければ少しでも迫ろうと思いますし、人気ならばどうにかして負かしてやろうと思います。でも、今はなかなかそれが難しくなってきていますよね。

[西]そうですか。

[武]昔はこの馬とこの馬が抜けたら、次はこの馬が勝ち上がるというような順番がありましたけど、いまは放牧に出ている実力馬が帰ってきて、休み明けも関係なく突き抜けられてしまい、先を越されることが珍しくありませんから。

[西]そろそろお時間となるんですけど、最後にエージェント制度についてどう思っていらっしゃるのか、お聞きしたいんですよ。武士沢さんはお願いしていらっしゃいますか?



[武]お願いしています。

[西]ブッチャけ、必要だと思いますか?

[武]本来は自分で管理するべきなのだとは思います。ただ、昔調教中に電話がかかってきて、出られず、馬を下りてから電話すると『ごめん、もう頼んじゃった』ということがけっこうあって、それが嫌だと思っていました。

[西]ある元調教師の先生は、攻め馬中に電話をしてきて、出ないと怒られるらしくて。でもその電話はその厩舎の調教に乗っている時だった、という笑い話がありますけどね(笑)。

[武]そういう形になっている以上は、やはりいてもらうと助かりますし、関係がない厩舎の馬に乗ることができる機会があるのも事実なんですよね。良い悪いではなく、日本独自の制度ができるならば、それはそれでいいと思います。

[西]僕が感じるのは、騎手の技術とかではない部分で馬が決まってしまっているというのは感じますよね。そもそも、馬乗りの技術を馬にも乗ったことがない人が評論できるわけがないはずなのに、それがまかり通っているのはやはりおかしいと思います。レースの中で騎手たちが感じている姿は騎手にしかわからないわけで、そこを知らないと次以降につながらないんですよね。

[武]それは本当にそうだと思います。点と点ではなく、線でつなげていくようにしないとダメだと思いますよね。1頭の馬に長い時間をかけて、教えていくというような意識をなくしてはダメだとは思います。

[西]いや、今回もお忙しい中、本当にありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

[武]ありがとうございました。

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