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西塚助手

【対談・田辺騎手②】パターンを変えるか変えないか、その見極めは難しい


田辺裕信騎手…以下[田]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]そういえば田辺さん、若い頃から斤量オーバーしたことがないですよね。

[田]もちろんありません。軽い馬はお断りさせていただいております。

[西]優秀なんだね。

[田]例えば、同じ日に54kgを2鞍乗っているとして、最初の54kgをオーバーしていたら、あとの54kgも同じようにオーバーするに決まっていると思いますけど、制裁って2回取られるんですかね?

[西]それは最初はなしで、2回目の54kgに対して制裁があるようです。

[田]オーストラリアで買った、世界で一番軽いといわれるプロテクターがあるんですよ。斤量オーバーしそうになった時のために買ったもので、自分は1回だけ、夏で軽い斤量があったとき着たんですけど、悠太郎(野中騎手)は毎日のように着ているんです。

[西]そうなんだ(笑)。

[田]以前、あとひとつ勝つと減量の斤量が減るので、それまで貸してくださいって言われたんです。それを聞いていた人に『そんなこと言って、あと半年くらい勝てないんじゃないか?』なんて言われてましたが(笑)。(※野中騎手は対談後の1月19日にJRA31勝目を挙げ、減量が3→2kgになりました)

[西](笑)

[田]でも、この寒い時期に薄着で競馬に乗るのは大変なんですよ。

[西]去年、別の若手騎手も49kgをオーバーして制裁を受けていましたけど、こちらからすると酷だと思ってしまう部分もありますよね。確かに、受けなければいいと言えば、そうなんですけど。

[田]自分で分かっていて受けるのはダメですよ。でも、よく説明を受けないでそうなってしまう場合は、事情が違いますよね。

[西]3歳牝馬とか、怖いですよね。

[田]木曜日に急に入れられても、乗れないですから。

[西]そこで乗り替わりになると、騎手ではなくて厩舎サイドが制裁を受けることになっていますよね。いまの田辺さんは、54kgまでですか。外国人みたいですね(笑)。

[田]一応そうですけどね(笑)。54も考えなきゃ、とも思っていますよ。

[西]話は変わりますけど、先日も我が尾関厩舎の馬に乗っていただきました。田辺さんは忘れているかもしれませんけど、昨年は安田記念レッドファルクスに乗ってもらったんですよね。

[田]もちろん覚えていますよ。

[西]道中は進んでいかなかったですか?

[田]位置を取りに行かないで、終いの脚に懸けるようなレースを、と言われて。ジッとしていたら、本当にシンガリまで下がってしまいました。



[西](苦笑)。しかもあれ、1200mじゃなくて1600mですからね。そこで聞きたいのが引退レースとなった阪神Cですよ。見ていました?

[田]あ、見てないかも。

[西]一緒に見ましょうよ(映像スタート)。

[田]この時のレッドファルクスはゲートを出ているし、これだけ流れに乗っているのは珍しいね。

[西](初めて装着した)ブリンカーの効果もあったとは思う。

[田]これ、乗っているのはボウマン?

[西]そう。田辺さんが安田記念のときに言っていた、進んでいかない感じがあるということで、ブリンカーを付けることになったんだと思います。

[田]年齢的な部分ではないか、という印象がありました。

[西]後ろから行って負けると、もう少し出して、前のポジションだったらもっと良かったんじゃないか、という話になりますよね。厩舎関係者の間でもそうです。

[田]乗り役同士ではそういう話にはなりません。でも、確かに厩舎の人たちと話をすると、聞かれることはあります。

[西]いまは出して行って、いい位置を取ることがすべてという風潮がありますけど、そんな簡単なものじゃない、と僕は思うんですよ。

[田]見ている映像は同じですから、ファンの方々と同じ感覚なんじゃないですか?

[西]この阪神Cのときのレッドファルクスは、とても調子が良かったように思えました。それでもいままでとは違う、位置を取る競馬をすると、最後はこうやって止まってしまうんだと思いました。

[田]引っ掛かってしまうから、ゲートは遅くなっても位置を取りにいけない馬、逆に掛からないけど、出していくと最後の脚を使えなくなってしまう可能性が高い馬、それぞれいます。

[西]そこの判断って、簡単じゃないと思うんですよ。

[田]実際に乗っていると、厩舎関係者が判断を迷っているパターンも少なくないかなぁ。前回の競馬の意味がなくなってしまうんじゃないか、と思えるような指示をされることがあります。

[西]ウチの馬じゃないですけど、グレーターロンドンは後ろから行くという、いつものスタイルを貫いたじゃないですか。

[田]大竹先生が良かったのは、『いつも通りでいいから』と言ってくれたことでしたね。グレーターロンドンでも、一度前に行ったことがありましたけど。

[西]ダメだったでしょう? 素人目からすると、後ろから行って伸びてこないと、なぜだ、と思うわけです。でも、その馬が前に行くことが正しいとは限らない、と思うわけですよ。

[田]よく"見せ場を作った"と言いますけど、若い頃はそういうことを考えていましたよ。馬主さんからしても、1回も名前を呼ばれなければ楽しくないと思いましたし、4コーナーで『おっ』と思えるようなシーンがあった方がいいと思っていたんですよね。でも、最近になって思うのは、見せ場があってもお金にはならないということ。

[西]そうだよね。ゴール板をどう通過するか、ですよ。

[田]そうなんです。でも、見せ場を作りたいと思って乗っている人もいますので、一緒になって前に行ったら、勝てる馬でも巻き込まれてしまう可能性があるわけで、そこをどう捉えるかだと思います。

[西]今回のレッドファルクスで言えば、位置取り云々ではなく、馬自身のリズムで走ることができていたならば、脚を使った可能性があると思うんですよ。



[田]ブリンカーを付けることで気持ちが入ったから前に行くのではなく、そのまま後ろで待機してもいいんですよね。

[西]改めて言っておきたいのは、ここでのボウマンの騎乗が云々、ということではないんです。ボウマンは上手ですし、このレースも上手に乗っていると思いました。でも、そこじゃないんです。それまで後ろから行っていた馬が、最後のレースで前で流れに乗って、負けたけど悔いなしとは、僕自身はちょっと思えないんですよ。

[田]馬券を購入している人たちからすると、『おい、パターンを変えるな』と思う人がいたかもしれませんしね(笑)。

[西]結果論だから、どちらがいいとは簡単には言えないんです。ただ、調子が良かっただけに、いつもの競馬ならどうだったのか、という思いが残りました。高松宮記念のミルコ(デムーロ騎手)や、安田記念の田辺の騎乗は納得できたわけですから。

[田]まあ、1回しか乗っていないから分からない部分もあるんですけど、(昨年の高松宮記念の)ミルコは、外をぶん回しても勝てないから馬群に突っ込んだと思います。タレてくる馬がいて、結果的には詰まってしまったんですけど。

[西]そこを見極めるのも、我々の仕事のひとつじゃないかと。また、それは簡単じゃないとも思うんです。

(※次回へ続く)

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