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西塚助手

競馬の魅力を伝えることが、人手不足解消の根本的な解決になるはず


皆さんもご存じかもしれませんが、厩舎で働く僕たちのような人間は、JRA競馬学校の試験を受け、厩務員課程で学んでからトレセンに入っています。

その試験は、これまで公務員試験などと同様に年齢制限がありました。例えば今年4月に入学する場合は『平成3年4月2日以降に出生』という条件があって、要するに、入学時点で満27歳以下の人しか受験することができませんでした。

ところが、今年10月に入学する人からは、年齢制限が撤廃され、何歳でもOKということになったんです。他の資格を満たしてさえいれば、極論を言えば、50歳の人でも受験できるわけです。

この変更によって、現在地方所属として働いていらっしゃる人々が中央に移籍するケースが出てくると思われます。そして実際に、すでにそういう動きがあるという話も聞いています。

他には、育成牧場の責任者の立場にあるような人々も、資格を満たしていれば受験できます。そういった方のために"調教師推薦制度"があって、JRAの調教師から声をかける、あるいは売り込みがあってJRAの調教師が推薦すれば、より入りやすくなる、ということのようです。

このような変更が行われた理由は、厩務員課程の受験者の減少が第一にあります。このまま減っていけば、近いうちに定員割れを起こすのでは、とさえ言われていましたから。さらに、これまでも何回かお話をしていますが、トレセンでは現状でも慢性的な人手不足の問題があるんです。

そういった状況で、経験があって、技術を持っている人々が28歳を超えても受験できるということになれば、人手不足解消の切り札になるのでは、とされています。

しかし、このような変更が本当の意味での解決になるかどうか。僕自身は、決してそうではないのでは、と思うんです。

このように、経験と技術を持って入ってくる人たちも、やがて定年を迎え、去っていきます。また次の世代の人たちが、同じように入ってくれればいいですけど、そうなるかどうかは分かりません。

しかも、育成牧場の人は以前から"仕事を覚えたと思ったら、すぐにJRAに行ってしまう"と言っています。年齢制限撤廃によって、その動きが加速すればどうなるか。さらに、地方競馬でも同様のことが起これば、人材資源の枯渇に繋がってしまう可能性さえあると思うんです。

馬の仕事はいわゆる"3K"と言われ、厳しい仕事だとされています。確かに朝は早いですし、今の時代はそういった面で魅力に乏しいのかもしれません。

ただ、僕自身、育成牧場からトレセンに入ってきたわけですけど、他の仕事と比べても、馬に乗る大変さ以外はそれほど"3K"ではないのでは、と思うんですよね。

また、僕が入ってからの変化だけで考えても、労働時間は短くなってきていて、いまの時代は有給休暇もしっかりと取るように指導されているんですよ。

朝が早いのは間違いありませんけど、その分終わるのも早い。しかも、給与も含めた福利厚生の充実もひと昔前とは比べものにならないんです。ブッチャけさせていただきますけど、馬の世界の中でも、JRAは突出して恵まれているわけですよ。

でも、その恵まれているJRAでさえ、人手不足が起きている。この現状は、競馬という産業の衰退を意味していることに他なりません。

年齢制限撤廃は悪いことではないと思います。しかし、それだけではダメだと思います。本来、競馬という産業は魅力的なはずなんですよ。手掛けた馬がダービーを勝つ、いや未勝利を勝つだけでも心が躍ります。それ以外にもいろいろある競馬の魅力を伝えて、競馬という産業を盛り上げていくことが、人手不足解消の本質的な部分なんじゃないかと思うわけです。

このコーナーを読んでいる方の中で、『馬の世界に入ってみたい』と思っている方がいたら、ぜひ飛び込んでみてください、とお伝えしたいと思います。

大袈裟かもしれませんけど、自分の人生をかけるに値する魅力が競馬にはあると思います。この連載もそうですが、そのことを1人でも多くの方々に伝えていくことが、競馬の発展につながると信じています。

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