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西塚助手

【対談・青木孝文師②】調教師として違いを生み、価値を上げるためには


青木孝文師…以下[青]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]考えてみると、僕自身と青木厩舎のスタッフたちとの会話といえば、勝ったら"良かったね"とか、レースが近かったら"頑張れ"とか、あるいは一緒のレースなら"敵だ。負けないぞ"というのが多くて。なかなかゆっくりと話をする機会がなかったりするんですよね。

[青]攻め馬も微妙に時間がズレていますからね。

[西]でも、一緒に攻め馬をした時に、青木厩舎もいいなぁ、と思うんですよ。

[青]馬質、自分の馬を見る目や知識、従業員の技術などは、魔法のように一瞬で上がったり、良くなったりはしないものです。ですから、そこは積み上げていかなければならない部分ですよね。それに対してお互いさまの心も、自分自身の配慮も、心がけ次第ですぐできることなんです。自分の心持ちひとつで価値を出せて、変化を生むのはそこしかないと、開業当初から思っていました。

[西]確かに、そうですね。

[青]一方で設備投資については、何でもお金をかければいいとは思っていません。費用対効果も含めていろいろな部分で突き詰めて考えて、やっていかなければいけないと思います。

[西]確かにお互いさまの心は大事ですし、助け合うことで有給を取りやすくなることはとてもいいことだと思います。ただ、担当の責任感というか、思いが薄くなってしまう可能性も否定できないと思うんです。そこのバランスというのは、簡単じゃないように思うんですよ。

[青]塚さんが尾関先生とスタッフの人たちの間で、それぞれの思いをくみながら、間に入って頑張っていますよね。そのことは、この対談のなかでいろいろな言葉から感じることができますよ。

[西]そう言っていただけて、嬉しいですよ。今の尾関厩舎のシステムはかなりのレベルだと自負しています。ただ、それでも最後は先生のひと言。これは大きい。その言葉があるから、みんな頑張れるんだと痛感しています。

[青]それは本当に大事だと思います。極端な言い方ですけど、頑張って良い結果が出たとしても、「お前じゃなくても良かった」と言われたら、信頼しろと言われても無理ですよね。

[西]それは絶対にダメですよ。

[青]この仕事で、「自分がやったから走った」「自分だから勝った」というのはNGワードで、言うべきじゃないし、実際そういうことではないと思います。もちろん、頑張ってしっかりと馬に対しての仕事ができたからこそ、良い結果になったのは確かです。でも、自分が頑張ったから勝てたのではなくて、頑張ったのは馬であり、人はそこに携わったということ。それに対して、上に立つ者は「あなたが頑張ってくれたおかげで、馬も頑張ることができた。よくやってくれたね」と言う。そういう言葉でいいと、私自身は思います。



[西]全くその通りだと思います。「ご苦労さん」とか、「お疲れさま」とか、本当に些細なひと言でいいんですよね。

[青]本当は、たまたま勝ったのかもしれません。でも、その人が頑張ったことが助けとなっている部分が少なからずあるはずです。いずれにしても結果が出たことは紛れもない事実であって、それに対してありがとう、という言葉はあるべきだと思います。

[西]技術云々ではなくてね。

[青]そうです。

[西]ブッチャけさせていただきますけど、G1を勝ってもあまり嬉しそうな雰囲気を感じない厩舎もあります。一方で、あまり勝っていない厩舎が未勝利を勝った時であっても、持ち乗りの若いスタッフが全身で喜ぶところを見ることがあって。見ているこちらまで嬉しくなるくらいなんですよね。

[青]全身で喜びを爆発させる人がいますよね。

[西]この違いは、もしかしたらそういった配慮の違いもあるのかなあ、と思うんですよ。ちょっと違うのかもしれませんけど、未勝利、500万は勝って当たり前な雰囲気だけが競馬じゃないというか。それはローレルクラブのパーティーに参加したときに教えられました。

[青]他のクラブの会員さんにも、そういう感覚の方々がたくさんいらっしゃいますよ。

[西]もちろん個人馬主さんの中にもいらっしゃいます。ただ、これは僕自身の感覚なのですが、いまの時代、そういった個人馬主さんよりも大手馬主さんやクラブ法人、という雰囲気があるように思うんです。

[青]そのことで話をさせていただきますと、自分もそうですが、調教師には賞味期限があると考えています。正直に言えば、いまはとにかく結果を出したい。泥臭くてもいいから、勝ち星が欲しいんです。交流でも何でも勝ち星を1勝でも積み重ねようと、先日も笠松の交流レースに3頭エントリーしました。

[西]そうでしたね。

[青]なぜそうしているかと言いますと、いまはおかげさまでたくさんの方々から声をかけていただき、預託をしていただいて、馬房が空いてしまうことなく、やることができています。しかし、それは時代が合っていたのと、僕自身が若くて開業したばかりということが大きな理由だと思うんです。私自身に価値を見出してくれて預託してくださっているオーナーは、まだ多くないのが現実ですよ。今後も預託頭数が確保され、レースにたくさん出走させられるかどうかは分かりません。

[西]去年はJRAで15勝、交流で1勝、合計16勝ですね。

[青]まずは結果を残して、実績を積み重ねていかなければ、5年後、10年後、同じように若くして開業してくる調教師たちの方が、当たり前ですけど"若い"という魅力があることになります。そのときに何をセールスポイントにできるかというと、残してきている数字しかないと思うんです。もちろん、人の縁といったような人間同士の面もあるのでしょうけど、それでも実績を残しておかないとダメだと思うんですよね。だからこそ、声をかけていただいたら何でも無条件で預託をお受けするのではなく、勝てるチャンスを感じさせてくれる馬を預からなければならないと思うんです。

[西]逆に、声がかかるいまだからこそ、ですよね。



[青]新馬、未勝利がおおよそ1400鞍。それに対して登録頭数から言うと、勝ち上がれる馬の割合は3割少々となります。上位の厩舎が5、6割近く勝つとなると、冷静に考えるとウチの厩舎の馬たちでは、2割から2割5分勝てば及第点だと思います。実際、ウチの開業初年度にあたる4歳世代は40頭預託を受けて、10頭勝ち上がりました。

[西]ということは2割5分ですか。凄いですよ。

[青]ただ、1勝で終わってしまった馬もいましたし、その点ではまだまだです。勝ち上がり率はもちろんのこと、内容も充実させていかなければなりません。そうしないと、"若い"という価値がなくなったときに、生き残っていけないです。

[西]しかも、その成績を続けなければならないわけですよね。

[青]先日、成績をあげている先輩の調教師さんと競馬場に向かう電車で話をしていて、「最近、調子がいいですね」と言うと、「最初は本当に苦しかったし、何とかここまで来られた。でも、続けなければ意味がない。だから余裕なんて全くない」と仰っていました。馬がたくさんいて、3歳も活躍していて、血統馬たちが増えている人であっても、そういう感覚なんですよ。私自身は、まだまだですし、余計に1つでも勝たないと、と思いますよね。

[西]調教師として、成績を残すことは本当に大事ですよね。

(※次回へ続く)

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