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西塚助手

【対談・青木孝文師④(終)】自分の思うことをやるために、調教師を目指した


青木孝文師…以下[青]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]これまでの青木先生の話を聞いていて、思ったことがあります。今は確かに、勝ち星を稼いで結果を残していかなければならない。その通りなんですが、今後若い後輩が増えた時に、数字以外の部分も大事になってくる、ということですよね。重要度がだんだんそちらにシフトしていくというか。

[青]勝負の世界ですから、数字は大事です。でも、年齢を重ねていったときに、数字以外でその人が人間として積み重ねた部分が大事になる。確かに、そういうことも考えています。

[西]そういう意味では、調教師になられる直前に所属していた小桧山先生は大きな存在だったんじゃないですか?

[青]いろいろ考えている方ですので、深い部分ではどうなのかはわりませんけど、塚さんの言う、数字以外の部分が特に凄い人です。語弊があるかもしれませんが、まずは馬主さんの経済事情を第一に考えていて、自分自身のやり方について、とにかく自信を持ってやられていますよね。

[西]小桧山厩舎に所属して、そう感じたということですよね。

[青]馬優先主義という考え方があって、それ自体はその通りだと思います。馬がいなければ競馬はできません。ただ、その馬を生産者が生産して、育てて、その馬を馬主さんたちが購入して、育成牧場で基礎をやってもらい、そして我々が預託を受けさせてもらう。そのプロセスのすべてに人が関わっているという現実がある。だから"馬は人"と言われるんだと思います。

[西]馬によって我々が生かされていますが、馬に対して人間が及ぼす影響も少なからずありますよね。

[青]ありますよ。極端な言い方をすれば、馬が競走馬になる過程で、誰か人間がいないと馬は競走馬になることができません。そのなかで、調教師として、プライドを持って仕事をしなくてはならないとは思いますが、尊大になったり、権威を振りかざすことではないんですよ。それは、誇りを持って、懸命に職務を全うすることとは別もの。それが分かっていると、1頭にそれまで携わった方々が頑張ってくれたからこそ、その馬を手掛けることができている、という思いを持つことができると思うんです。これは、絶対に忘れてはいけないことだと思います。

[西]当たり前のことなんですけど、そういうことは忘れられがちなんじゃないか、と感じることがあります。青木先生の話を聞いていると、スタッフたちに対しての思いというか、気持ちを感じますよね。

[青]自分が思うことをやりたいから、調教師を目指したわけです。ですから、こちらの『こうしたい』、『こうして欲しい』というようなことはレジュメにしたり、直接話をしたりします。ウチのスタッフとして所属している以上は、その方向性を理解して、従ってもらわないといけないわけですよ。もちろん、それはあくまで方向性であって、話し合いもしますし、意見は聞きます。ただ、どうしてもNGな行動や考えもありますから、それについてはこちらの考えに従ってもらっています。

[西]ちなみにどんなことですか?

[青]まず馬房割り。牡馬が東で、牝馬が西なんです。

[西]あ、うちもそうです。

[青]効率性からそうしているんですけど、あともうひとつは厩務員さんに過剰な縄張り意識を持ってほしくないからなんです。"お互いさま"ということは、人の仕事に入っていかなければならないですし、逆に人に入ってきてもらわなければならないんです。そこで自分のスペースとか縄張り意識を持たれては、仕事になりません。担当馬はいますが、自分の馬ではないわけで、『俺の馬じゃないから分からない』は絶対NG。気持ちがあるからこそ『俺の馬』と言うんでしょうから、自分自身も分かる部分はあります。担当馬は2頭ですから、その2頭に思いを込めることは大事だし、嬉しいことですよ。でも、『俺の馬じゃない』というのは、この世界の一番駄目なところです。

[西]いや、本当にそう思います。

[青]その悪影響が出る例は、持ち替えで競馬に行ったときに、馬主さんが来て『どう?』と聞かれて、『俺の馬じゃねぇから知らない』ということ。こんなバカな話はありません。

[西]馬主さんには担当なんて関係ないですからね。自分の馬を世話してくれている人だと思うわけですから。

[青]高い預託料を支払っていただいている馬主さんにとっては、担当云々の話は関係ないわけです。すべての馬についてスタッフが情報を共有して、しっかりと対応できるようにしてもらっています。逆に馬主さんサイドの意見やリクエスト、どう考えているか、ということについても、隠すことなく伝えています。例えば、『次のレースを使って放牧したいとオーナーサイドが考えている』ということなどを、グループLINEで教えています。

[西]えっ、それはなかなかできないことですよ。凄い情報公開ですね(笑)。

[青]かなり細かいところまで話をしています。そうすることで、スタッフたちとのコミュニケーションもスムーズにできますし、馬に対しても良い影響が大きいように思います。例えば、今週と来週で同じような番組があるとしましょう。スタッフは今週行けるならば行きたい。ただ、オーナーサイドが望む騎手は来週じゃないと無理、という状況だったら、『今週行きたい』とオーナーに相談してみるけど、もし『来週使おう』と言われたときには理解してほしい、というような感じで話ができます。

[西]それはスタッフの士気が上がります。働いている方とすれば、そういう情報が一番欲しかったりしますからね。

[青]そうなんですよ。自分自身、そういう感じで仕事をしたいという思いが強かったので、自分が調教師になったときには絶対そうしようと思っていました。実際、スタッフたちも有給休暇を取りやすくなったりもすると思うんです。もちろん、止めなければならない情報もありますけど、それも言い方を変えるなどして、できるだけ伝えるようにしています。

[西]いや、なかなかできないことですよ。あっ、こんな時間になってしまいました。本当はもっとたくさんお話をお聞きしたいんですけど。

[青]実は、伊藤正徳厩舎時代に自分が担当していたネヴァブションの産駒を、現役時に所有されていた廣崎利洋オーナーからお預かりさせていただく予定になっているんです。

[西]それは本当に夢がありますね。自分が手掛けた馬の産駒たちに携われるというのは、我々の仕事の醍醐味のひとつですから。しかも、種馬として。

[青]あの馬には本当にいろいろな思いがあって、その産駒に携わらせていただけるというのは、本当に嬉しいです。何とか、父親のような活躍をしてくれるように、できる限りのことをやって頑張りたいと思っています。

[西]いや、調教師になってからの青木先生は充実しているように見えます。

[青]大変なことももちろんありますが、本当に良かったと思っています。だからこそ、定年まで仕事ができるように、頑張っていきたいんです。ぜひ、塚さんも調教師試験、頑張ってくださいよ。

[西]本当ですよね。それを言われると、返す言葉もございません。

[青]良かったらまた呼んでください。

[西]もちろんです。今回はありがとうございました。

[青]ありがとうございました。



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