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西塚助手

【対談・野中悠太郎騎手②】馬にとって良いと思えば、恐れずに発言していきたい


野中悠太郎騎手…以下[野]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]ところで、根本先生に怒られたことはないんですか?

[野]ありますよ。最初の頃は調教の時計が全然合わなかったりしましたから。ですから、しっかり乗れるようになるまで他の厩舎のお手伝いはさせてもらえませんでした。

[西]そういうのがこの世界の常識ですよね。しっかりできるようになってから、いろいろな厩舎に入っていく。これは当たり前かもしれませんけど。で、勝手なイメージで申し訳ないですけど、根本厩舎の馬に延々と乗り続けていたイメージが強いんですよ。

[野]確かに、ひたすら自厩舎の馬に乗り続けていました。僕自身、営業が下手ということもあるとは思うんですけど。そもそも固定の厩舎で乗るのが好きじゃなかったりもするんです。



[西]なぜ?

[野]例えば水曜日に乗りたい馬が他にいたとすると、縛られてしまって乗れなくなってしまうじゃないですか。もっとバリエーションを持たせたいというか。

[西]現状、今のペースだと年に25~30勝という感じですよね。そういう状況でこんなことを言う人って、初めてかもしれない。どうしても安定を求める人が多いように思うんですよ。

[野]そうなんですかね?

[西]どこかひとつの厩舎でもレギュラーを持っていると、たとえすべての馬に競馬で乗らなかったとしても、チャンスは増えるわけですよ。例えば、中央場所で2、3着とかに来ている馬が福島に行くとする。さらにその週に本場でG1があれば、当然チャンスが回ってきます。そこで勝ったとしても次は乗れない可能性はあるけど、そういうことの積み重ねはあるはずなんですよ。言い方は不適切かもしれないけど、お互い様の関係というか、厩舎としては手伝ってくれる騎手の人に追い切りをかけてほしい時にも要望ができますし、騎手にとっては何かのときには騎乗チャンスを回してもらえるということなんですよね。

[野]確かに、それはそれでありですよね。ただ、何なら僕は競馬に乗らなくていいから、同じ馬に調教で続けて乗っていたいんです。人が乗っている馬に乗りたくないというか、自分が自厩舎で乗っている馬にはなるべく自分が乗りたい。言いたいこと、わかってもらえますか?

[西]わかりますよ。そういうことを言う人もいますし、その感覚はわかります。

[野]続けて乗っていると、その厩舎に対して、良い意味でも悪い意味でも情が沸くといいますか、気持ちが入ってしまうようになります。言い方を変えると、ズブズブの関係になるのが嫌なんです。

[西]でも、根本厩舎とはズブズブだよね。

[野]それは自厩舎ですから。

[西][野](笑)

[野]そこは割り切らないと、と思っています。でも、「このレースに乗って欲しい」とか、「ここの追い切りで乗って欲しい」というように、頼まれるのはもちろん嬉しいですよ。

[西]それは騎手ならば誰でもそうでしょ。厩舎サイドとしても、その週に出走する馬にはレースで乗る騎手にできる限り乗って欲しいと思っているケースが多いはずですよ。

[野]毎日乗るとしても、毎日馬が別だとすると、好きじゃないかもしれません。

[西]こうして話を聞いていて、いい意味で"なんだ、コイツ"と思っています。そんなことを思う22歳の騎手がいるんだぁ、と思いました。同じような年代の騎手を思い浮かべたときに、仕事の仕方や私に対する言葉や態度は、あなたのそれとは明らかに違うと思います。あなたは、本質的に馬を作ったり、あるいは馬にとってどうすることが良いのか、ということなどを考えたいし、そこも騎手として重要な仕事のひとつだと思っていますよね。

[野]そうですね。

[西]でも、そうじゃない人もいるんですよ。誤解を恐れずに言えば、どうやって成績の良い厩舎に取り入るか、いかに大手の馬主さんに可愛がってもらうかということを第一に考えている人がいるんですよ。それでやっていけてしまうのが、この世界でもあったりするんですけどね。

[野]もちろん営業も大切ですし、それも武器だと思いますよ。

[西]一方であなたはしっかりとした考えに基づいて、自分の思いを口にできている。これは本当に凄いと感動さえ覚えます。

[野]そうですか?

[西]根本厩舎での環境が、今のあなたに影響しているんでしょうね。でも違うタイプ、坂路15秒と言ったら15秒なんだ、というような厩舎だったら、ストレスを感じてしまうはずですよ。

[野]ウズウズするかもしれません。もし、自分の感じたままを伝えて、その通りにやってダメだったときには自厩舎であっても謝りますし、素直にミスを認めますよ。

[西]そうは言っても、結果がすべてではないし、馬が見せる姿やサインを見逃してはダメだと思います。ただ、それでも走ってしまうのが馬だし、競馬だったりするから、また難しいんですよね。

[野]以前、中山でふた桁人気の馬に乗って2着に来たことがありました。自分としてはノーマークだったことと、馬のリズムを重視した結果、中団で流れに乗って、直線で脚を使うことができたからだと思ったんです。でも中山だと勝つイメージが湧かなくて、うまく乗れて展開が向いても2、3着という感じだったので、先生には「距離は良いですけど、中山だと相手も強いですし、福島、新潟の方が展開も向きやすいと思います」と伝えました。先生も「俺もそう思う」と仰っていたんですけど、その後エージェントの方は「あいつは営業が下手だな」と言われたそうなんです(苦笑)。自分としては馬にとって良いと思って提案させていただいたつもりなんですけどね。

[西]本当にスケベさがないね。騎手の中には厩舎サイドが嫌がることは全く口にしない方もいらっしゃいますから。これは批判ではなく、それはそれで良さだったりするわけですけれど。



[野]違うケースもあります。連続して着に来ていて、人気にはなっていたものの、デキに関しては不安がありました。それでも2着に来たんですけど、レース後に先生から「どうだ?」と聞かれたので、「お願いなんですけど、可能ならば一旦リフレッシュさせてください」と伝えました。すると「俺もそう思う。オーナーと相談するよ」と仰っていただいたんです。もし放牧に行って帰ってきたとき、たとえ自分が乗ることができなかったとしても、それはそれで仕方がないと思うんですよ。チャンスをいただいたときに、着に来ていたにも関わらず勝ち切ることができなかったわけですから。その後、トップジョッキーの方に乗り替わって勝ったとしたら、それは自分自身の責任だし、もっと頑張らなければならないということだと思います。ただ、馬のことを考えたときには、そこで休ませてあげることで、その将来が良くなってくれると思えるからこそ、伝えるんです。どの馬に対しても、常にそういう感覚です。

[西]いや、あなたを尊敬します。誤解を恐れずに言えば、みんなわかっていても、同じようにできていないケースが圧倒的に多いはずですよ。自分自身を含めて。馬に生活をさせてもらっているはずなのに。

[野]適材適所で馬を走らせて欲しいんです。馬をいい状態の時に合う条件で使ってほしいんですよね。

[西]その通り。でも、大人には事情があって、そういう部分に目を瞑らざるを得ないケースが増えて、いつの間にかそういう思いを失ってしまったりするわけですよ。

(※次回へ続く)

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