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西塚助手

【対談・山田敬士騎手③】失敗の後、本当にたくさんの方に支えていただきました


山田敬士騎手…以下[山]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]距離を間違えてしまったレースの後、先輩たちから何かアドバイスはあったんですか?

[山]松岡さんと黛さん、あと丸田さんなどが声をかけてくださいました。

[西]黛さんが油断騎乗で騎乗停止処分を受けたとき(※2011年2月26日小倉12R。30日間の騎乗停止となった)も、松岡さんはたくさん話をされていましたよ。

[山]あの件を起こしてしまった日の夜に、黛さんが調整ルームの部屋に来てくださって、いろいろ話をしてくださいました。ご自身の経験についても話をしてくださったんです。

[西]騎手としての黛さんにとって、あの一件がすべてマイナスになったかというとそうではなくて、あそこからプラスになったこともあるし、始まったこともあったと思います。そうは言っても、山田くんの方が強烈ではありましたけど。

[山]僕の場合は、完全に勝ったと錯覚してしまっていましたから。生まれて初めて、夢であってほしいと思いましたし、ここから飛び降りてしまうか、という考えも一瞬よぎりました。

[西]あの夜は、そういう追い込まれ方をすると思いました。この件と関連するんですけど、今回対談をお願いしたときに、小桧山先生と話をしたんですけど、山田君に対して言われたことがあって。"発言したことは、良くも悪くも自分に跳ね返ってくるものだから、自分の責任でしっかりと発言したことならば書いていいし、責任を持って話をするように言ってほしい"ということだったんですよ。

[山]そうだったんですね。

[西]生意気かもしれませんが、そういう教育の仕方って、素敵だと思います。以前ある騎手にこのコーナーに出てほしいとお願いした時に、"本当は出たいんですけど、調教師が無駄なことを話したら困るから一切出るなと言われているんです"と断られたことがあったんですよ。そういうスタンスでもいいのかもしれませんが、それだと失敗はしないけど、成長もないように思うんです。



[山]僕は先生から、そういう言い方をされたことはありません。

[西]普段から社会人として、それ以前に人間として、というような話をされたりするんですか?

[山]"俺はジョッキーではないから"ということで、競馬や攻め馬のことについて注意を受けることはほとんどありません。でも、例えば出遅れてしまった時などは、何をやっているんだ、と注意されますし、人間として、社会人としての言動については本当に厳しく指導を受けます。

[西]直接お話をして、そう感じました。

[山]失敗してしまったときの対応についても、デビュー前から本当に厳しく指導されてきました。"必ず直接謝罪に伺いなさい。許してもらえるかどうかは別にして、自分自身の誠意をみせることが何よりも大事"だと言われていて。今回についても、"手紙で済ませることもできるけど、人は会って話をすることで伝わる部分というのがあるんだ"と言われました。

[西]この世界は勝負の世界で、勝つことが最優先とされる。だからなのか、勝っている人が凄い、偉いと思われる風潮があります。確かに、そういう価値観があってもいいとは思いますけど、そうではない価値観というか、そうではない部分が評価されることもあっていいと思うんですよ。競馬の世界では正しいことでも、一般社会や人生においては必ずしもそうじゃない、ということを教える人が段々と減ってきているように感じるんです。

[山]そうなんですかね。

[西]たくさん勝っていなくても、幸せな人生を送る調教師さんや騎手の方々もいれば、逆に大きいレースをいくつも勝って、勝ち星を量産しながら、それほど幸福感を感じていない人もいるのが現実だと思います。これは、ひょっとしたらファンの方々には関係がないのかもしれない。でも、サークル内で働いている我々には、もう少し勝ち負けだけでは測れない価値観がないとダメだと、僕自身は思うんですよ。そういう意味で、小桧山先生はよく理解されていると感じました。青木先生も同じような感覚があります。

[山]確かに、青木先生からもそういう部分について話をしていただくことが多いですし、感謝しています。僕自身の話ではないんですけど、皐月賞に出走したダディーズマインドについて、以前から調教から乗り続けている北斗さん(宮崎騎手)で行くことに意義がある、という話をしていらっしゃったんです。

[西]いまは乗り替わりが当たり前の時代ですけどね。北斗は青木厩舎の開業当初から調教を手伝ってきているということもあるんだろうし、時代にそぐわないのかもしれないですけど、いろいろな思いや考えが青木先生にあってのことだと思います。そういうなかで、距離を間違えてしまって、その直後は騎手免許を取り上げろなど、いろいろ厳しい意見もあったけど、今は立派に騎手として頑張っている。このことは、とても大きな意味があると思うんですよ。

[山]北所オーナーをはじめ、小桧山先生や青木先生、そしてたくさんの方々に助けていただいて、何とか続けることができています。何とか頑張って競馬で良い結果を出すだけではなく、人間としても成長できるように、一生懸命にやっていくことしかできないと思っています。

[西]騎乗停止期間中は攻め馬に明け暮れていらっしゃいましたけど、どうでしたか?

[山]いろいろなことを本当に考えていたというか、いろいろなことが頭に浮かびました。

[西]たとえばどんなことですか?

[山]いろいろあり過ぎて、何かと言われるとパッと思い浮かばないんですけど……。それこそ、挨拶ひとつでも、いろいろ考えたりしました。普通に"おはようございます"という挨拶をするにしても、笑顔ですることができていたのかとか、今はそうするべきじゃないのか、とか、本当にいろいろ考えました。逆に、いろいろ考えていないと、落ち込んでしまうというか、自分自身を追い込んでいってしまう感覚がありました。

[西]3ヶ月間、外出とかもしなかったんですか?

[山]松岡さんには『食事も行くな。とにかく我慢して毎日過ごせ』という話をしていただいたんです。実際コンビニに行くくらいで、あとは調教と寮の往復という感じで、休みの日には実家に帰っていました。

[西]いまとなっては笑い話になったりもするんだろうけど、いろいろなところでいじられたでしょ?

[山]それはもう。

[西]今日は距離間違えなかった?というようなデリカシーのない大人たちもいるはずですよ(笑)。

[山]確かに、言われたことありました(笑)。



[西]でも、それはもう一生言われるだろうし、それにどう対応していくのか、ということを考えるべきだよね。

[山]そう思います。

(※次回に続く)

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