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西塚助手

【対談・田辺騎手②】馬が走るスペースは、見た目以上の早さで変化するんです


田辺裕信騎手…以下[田]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]交流レースの話で思い出したんですけどね、最近、田辺さんが交流レースに乗っている姿をお見かけしない印象なんですけど?

[田]来週、行きますよ。

[西]えっ、どこの厩舎ですか?

[田]佐々木竹見カップ(※1月28日)で川崎に行きます。

[西]それは交流レースじゃないでしょ。

[田]皆さんと交流するための交流レースです。

[西](笑)

[田]重賞レースは行っていますけど、確かに平場は乗りに行っていませんね。交流レース、乗せてよ。尾関厩舎、交流行くの?

[西]あまり行かないかなぁ。

[田]じゃあ、俺も行かない。

[西]いやいや(笑)。でも、田辺さんが断っているわけではないでしょ?

[田]体重とか、いろいろな事情があって断っていたら、頼まれなくなりました。

[西]53kgということもあるか。

[田]信ちゃんばりにブッチゃけさせていただきますと、乗りたい馬もいれば、ちょっと無理はしたくないという馬もいます。中央で土、日にビッシリと乗っている中で、平日にコンディションを作っていくというのは、みんなが思うほど簡単じゃない。かといって、乗りたい馬だけ乗るというのもどうかと言われますしね。



[西]JRAでもそうだけど、交流レースでも、選ぶことは別に悪いことではないんじゃない?

[田]そう言ってくれる人ばかりじゃないよ。全部が西塚厩舎みたいな感じではないんですよ。厩舎、オーナーにとっての期待馬だったら、やはり無理してでも乗ってほしいと思うでしょうし。もちろん、それは騎手冥利に尽きる部分なんですけどね。

[西]でもね? というわけですね。

[田]そういう馬も勝ち負けだと思って、依頼されている可能性があるわけですよ。でも、そこは自分との温度差があって、『走らないですよ』と言ったら、『え?』と(苦笑)。

[西]そういうこと、よくありますよ。

[田]なかなか、ハッキリとは言いづらい部分はあります。

[西]でも、田辺さんはハッキリとおっしゃいますよね。堂々と『信ちゃん、全く走らないよ』って(笑)。

[田]信ちゃんとかは別だし、それでも結構気を遣って言っているんですけどね。

[西]臨場に行ったときに、田辺さんが『走らねぇ』と言って上がってくるのをよくお見掛けします。

[田]そういうことは、厩務員さんには言わないようにしています。担当する馬を自分で選べるわけではないし、担当している期間はそれこそ生活を共にしているわけで、その人に言うのは違いますから。でも、調教師さんが意識というか、感覚が違うな、と思った時には、ハッキリと言います。

[西]それは正しいと思います。そしてそこは、とても大きな問題ですよ。

[田]言うことによって、その後の馬生を変えてしまうことになりますからね。走る馬だと思っている調教と、走らないと思っている調教では、全く違ってしまいますから。

[西]いや、名言ですよ。凄くいいことを言ってくれました。もし期待ほどではない馬に対して、走ると思って行う調教をしていたら、余計に走らなくなってしまう可能性が高いわけですから。

[田]そういう馬は、マイナスの部分を補うような調教をしなければならないのに、ほぼ完璧で、求めるものが少ない馬だと思われていたら、行うべき調教が行われなくなってしまう。結果として、良くならない可能性が大きくなってしまうはずですよね。

[西]まさに、その通り。その馬の資質や状況で、調教で求めるものが変わるのは当然で、それをより正確に把握しなければダメだということですよね。

[田]走るはずの馬で負けた時に、騎手に責任があると思うのはいいんですけど、その馬のためにはならないと思うんですよ。

[西]負けました。騎手に責任があります。じゃあ、違うジョッキーにして、同じ方法、過程でレースに向かいます。でも、それでは何も残らないんですよね。

[田]その原因が分かっていないわけですから、そこを解決しないと、ほとんど前進は望めないでしょう。

[西]だから、レース後の話が大事なんでしょうね。

[田]レースが終わってから"乗った感じ、どう?"というような感じで聞いてもらえると、"こんな感じで、ここが足りないから、こうやっていった方がいいと思います"とか、"こういうところをレースでみせたので、対応してもらった方がいいでしょう"という感じになります。"走らねえ"で終わらず、続きが出てくるわけですよ。そのままの状態では走らないかもしれないけど、変化をさせることで走る可能性があるかもしれないわけですから。

[西]実際、そこの部分を取り組んでいかないと、結果なんてなかなか出ないですよ。ただでさえ、一生懸命やっていても思うように結果なんて出ないのに。現実を見極めないと、馬に対してトンチンカンなことをし続けて、結局良い結果が出ずに終わってしまうことになります。そこを食い止めるために、田辺さんはハッキリと言うわけですよね。



[田]信ちゃん、いいこと言いますね(笑)。言い方は悪いかもしれませんけど、競馬で良い結果が出ませんでした。じゃあ、次はどうしようか、という繰り返しじゃないですか? 結果が出なかったことが誰々の責任だ、なんてことを続けていても、次以降も良い結果は出ないように思います。

[西]競馬の犯人探しほど、無意味なものはないということですよ。そういえば、それに関連して聞きたかったことがあって。ニューイヤーSの大野(キャプテンペリー)の騎乗について、ツイッターなどで話題になっていたみたいなんですよ。

[田]えっ、そうなの? 知らないなぁ。

[西]ちょっと見てみてくださいよ。というか、レース見ないんですか?

[田]土曜日は小倉でしたから。

[西](レースを見ながら)キャプテンペリーらしい競馬をしていると思います。4コーナーから外を狙っていくわけですけど、結局包まれて、追えないで負けてしまいました。

[田]大野は余裕があるよ。ここで追ってしまうとスペースがなくなってしまい、脚を引っ掛けて落馬してしまったりするわけですから。

[西]そう、前の馬に乗りかけて、落馬してしまうのはこういうケースですよね。

[田]脚があって、行く場所がない。そんな時に焦って"あっ、そこだ"と思って突っ込んでいくと、結局閉まってしまって、スペースがなくなってしまうことは珍しくありません。そうなると、落馬、転倒してしまうことになりますから。

[西]この映像だけだと、何もやっていないように見えてしまいます。しかも、こういうシーンは往々にして馬場の内側で見られますよね。

[田]でも、馬場が悪いときには、内の馬は外を目指しますし、逆に外の馬は馬場の良いところを通りたい。でも、あまり外すぎるのも嫌ですので、真ん中に集中します。これは、しばしばあるケースですよ。

[西]この騎乗に、いわゆる"ヤラズ"じゃないかという指摘があるみたいなんですよ。

[田]それだけ人気だったの?

[西]8番人気だったかなぁ。

[田]お金がかかっているのはわかります。ただひとつ言えることは、スペースというのは、映像で見ているよりもはるかに早いスピードでできたり、なくなったりするものなんですよ。

[西]僕自身の見解を言わせていただければ、上手に乗ることができずに負けてしまったら、厩舎関係者はともかく、馬券を買っている人が『下手くそ』、『何をやっているんだ』というようなことを言うことは、これは仕方がないというか、許されると思うんです。それでも、『死ね』とか、そういう言葉はダメだと思いますが。ただ、"ヤラズ"とか、"八百長"と言われてしまうと、ちょっと話が変わってきますよね。

[田]えっ、そんな話になっているの?

[西]ネットで見る限り、そういう声もありました。

[田]JRAでは、そういう部分まで裁決委員が見ていて、レースを確定させています。ですから僕としては、そういうことはありません、とだけ言わせていただきます。

[西]キャプテンペリーを管理する岩戸先生は、ツイッターで『このやるせなさをどう処理していいかわからない』とつぶやいていました。

[田]正直だと思います。でも岩戸先生は分かっているから、大野を責めていないと思いますよ。

[西]そりゃ、みんなやるせないよね。でも、それも競馬です。

[田]まあ、そこで騎手に八つ当たりしたり、責めるのはちょっと違うと思います。ただただ、前が開かなかったということでしょう。もちろん、やるせないのは騎手も同じ。誰だって勝ちたいし、勝とうと思って乗っていますから。

(※次回へ続く)

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