西塚助手
ダービーは皐月賞と違い、使ってから臨むのがベター?(西塚助手のレース回顧)
先週のダービーはコントレイルが1番人気に応えて優勝し、オークスのデアリングタクトに続いて無敗の二冠馬が誕生しました。
皆さん、同じような感想なんじゃないかと思いますが、いやぁ、強かったですね。
僕自身、皐月賞でコントレイルが見せたレースぶりから、普通に走れれば強い競馬をするんじゃないか、と思っていました。今回は皐月賞と違い、1コーナーで3番手に付ける形になりましたが、あの位置取りとなったときに、これはほぼ勝ったな、と思いました。その後は、思っていた通りの強さでしたね。
コントレイルが皐月賞を勝った時に、このコーナーでは休み明けでレースに向かうことと、一度叩いて本番に向かうローテーション、それぞれのメリットとリスクについての話をさせていただきました。
皐月賞から中5週、コントレイルが皐月賞以上のパフォーマンスを演じたということは、確かに上積みがあったということなんでしょう。陣営の皆さんの選択が、正しかったことを証明したわけです。
一方、無敗のダービー馬が誕生した4日前に行われたさきたま杯は、ある意味対照的な馬が優勝しました。勝ったノボバカラは51戦目で、勝利は1年ぶり、重賞勝ちは3年5ヶ月ぶりでした。
そのノボバカラは前回勝った栗東S(19年5月)から11戦、ほぼ1ヶ月に1走のペースで、コンスタントにレースに使われてきました。この戦績を見ると、負けてもレースを使っていくことでのプラスアルファもあるんだなあ、ということを改めて感じます。
皐月賞の時に話しましたが、レースを使うことで良くなる可能性もありますし、逆に悪くなる可能性もあります。そこは人間の力が及ばないところで、我々も試行錯誤しながら臨んでいます。だからこそ、馬は難しいんだと思います。
100回の追い切りより、1回のレースと言われることがあります。負けたとしても、レースで経験したことが馬の力になり、良い効果を生むこともあるわけです。僕自身、80%とか90%まで調教で身につけることができたとしても、実戦を経験することでしか得ることができないものがあることも事実だと思います。
ノボバカラは51回のレースを積み重ね、得てきたものが久々の勝利に繋がったんだろう、と僕自身は思っています。
そこで、話が前後してしまいますが、今年のダービーで個人的に注目していたのがワーケアでした。
ワーケアは弥生賞でサトノフラッグの2着に入り、皐月賞を使わずに約3ヶ月ぶりでダービーに挑みました。僕の見方ですが、コントレイル、サリオスに割って入る可能性があるのはこの馬かもしれない、と思っていたんですよね。
でも、ワーケアの結果は8着でした。今年の皐月賞は年明け緒戦の馬がワンツーしましたが、ダービーで掲示板に載った馬は皐月賞、NHKマイルC、京都新聞杯を使われてきた馬でした。皐月賞とダービーは別で、やはりダービーは使ってから向かうのがベターなんでしょうね。
コントレイルとノボバカラを見ると、しっかり使っていくことの大事さ、レースを使うことのリスク、それぞれのバランスは馬や状況によるもので、ずっと答えが出ないのかもしれません。本当に難しいと思いますし、だからこそ面白いんだと改めて思います。
最後に個人的な話になりますが、ダービーデイは僕も馬を連れて競馬場に行きました。僕がパドックを引いたのは午前中の4レースでしたが、無観客のダービーというのは、やはりこれまでにない感覚でした。
ダービーデイといえば、例年だったら朝からお客さんはもちろん、関係者、マスコミもいつも以上に集まって、まさにお祭りムード。それが今年は観客の皆さんだけでなく、オーナーもおらず、関係者、マスコミの方々でさえほんのごくわずかです。
現在の状況になって、僕も改めてダービーというものの重さを感じましたし、同時に今年のダービーを忘れてはならない、とも思いました。
競馬ができる幸せは、何にも代えがたいものです。ダービーは終わりましたが、今週は安田記念です。引き続き開催させていただけることに感謝しつつ、頑張っていきたいと思います。
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