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西塚助手

検疫が空前の大混雑…これもコロナ禍の影響なんです


再び感染者数が増加傾向にある新型コロナウイルスですが、ご存じの通り、競馬界にもさまざまな影響が出ています。

無観客がその最たるものですが、我々関係者にはそれ以外にも影響が出ていて、実はここ数週間、検疫がなかなか取れない状況になっているんですよ。僕自身、ここまで混雑しているのは記憶にないほどです。

改めて説明しておくと、外部の育成牧場などからトレセンに入厩する際には、防疫や馬の取り違い防止などの観点から、“検疫"を受ける必要があります。現在は育成牧場の発展により、馬の移動が頻繁に行われるようになりましたから、その検疫を確保することが重要なんです。

ところが夏競馬の時期に限り、トレセンで火曜日に40頭行われていた検疫を行わなくなるんですよ。なぜかというと、夏場は各地で競馬を行うので、JRA職員の方々が出張で北海道や小倉などに行くことになるから、ということのようです。

とはいえ、ただ減るわけではなくて、例年なら函館で1日26頭、札幌で15頭の検疫が水曜日から日曜日まで行われていて、合計で1日41頭の検疫があることになっていたんです。

例年ならそれで良かったのですが、そこで起こったのが今回のコロナ禍です。その影響で、今年は函館開催時の札幌、札幌開催時の函館、それぞれの馬房を使うことができません。つまり皆さんご存じ、札幌開催時の“裏函"(※函館で調整して札幌のレースに出ること)が使えなくなるわけです。

そして、函館開催は今週で終了します。ですから、来週からは札幌で行われている、1日15頭分の検疫しか行われないことになるようです。これは美浦だけではなく、東西合わせてですから、いかに少ないかお分かりいただけるのではないでしょうか。

それでも、函館開催の時期ならまだ対応できました。以前お話ししたように、美浦→函館の直前輸送ならば結果も出ていますし、選択肢としてもあり得る話です。ですから、函館の検疫ではなく、美浦で検疫を受けて函館へ、ということも可能なんです。

しかし、それが札幌開催となると、話が変わってきます。函館から札幌までの輸送は5時間前後かかりますから、輸送時間が延びると、美浦からの直前輸送で臨むにしても、それだけリスクが増えるわけです。

通常ならば、札幌の検疫が取れなかったから、とりあえず函館に入厩させる、ということができていたんです。しかし、今年はそれができない。だとしたら、美浦で火曜日に検疫を行ってくれればまだいいのですが、そこは例年通り。結果として、検疫待ちの馬が溢れてしまうことになったわけです。

その影響として、例えば3歳未勝利戦を見ると、例年なら優先出走権がない馬はある程度間隔を空けないと出走できなかったのが、今年は馬の入れ替えが少ないから、そこまで長く空けなくても大丈夫なようです。特に函館は、中2~3週で使えているケースがとても多いです。

たくさん使えるということは、それだけ放牧に出る馬が増えると考えるのが自然です。しかし、現在は入厩のための検疫がなかなか取れない。となると、結果が悪かったとしても、間隔を空けずに使えるなら……ということで、放牧に出ずに使い続ける馬が増える可能性が出てきます。

それに対して、入厩を待っている馬も多くいます。ですから、出走させる馬と入厩してくる馬の数的バランスが狂ってくるわけですよ。この傾向がこの2~3週間で一気に加速している感じで、検疫が混むようになったんです。

一方で、当初は間もなく東京オリンピックが行われる予定でしたから、来週から3週間は札幌と新潟の2場開催となります。それだけ出走馬が減りますから、馬の入れ替えが減る。つまり、放牧に出る馬も少なくなり、入厩する馬も少なくなるはずです。

いずれにしても、この3週間がどのような動きになってくるのか、正直読めない部分があります。このあたりは、注意深く観察しなければいけないと思っています。

ところで、この検疫については、そもそも必要なのかどうかも含めて、いろいろな意見があります。僕自身としては、やはり必要なものだとは思っていますが、改善していく点はあるでしょう。

たとえば、頭数を減らしても夏場の火曜日に検疫を行う、簡素化を目指す、午前と午後に2回行うこと、頭数を増やすなど。議論を重ねつつ、スムーズに入退厩が行われるような制度を考えていくべきでしょう。

態勢が整った馬がいるのに、入厩することができないという状況は、馬主さんはもちろん、厩舎、出走頭数を確保したいJRA、さらにはファンの方々にとっても、決して良い状況とは言えません。

確かに、今年はイレギュラーな状況ですが、予定通り来年に東京オリンピックが行われるとしたら、来年もこの時期は2場開催になる可能性もあるでしょう。コロナ禍の収束もなかなか見えない状況で、現在の制度について、改めて考えてみる機会なんじゃないかと思うんです。

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