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西塚助手

【スプリンターズS回顧】グランアレグリアが土曜追いを行った理由は?


先週のスプリンターズSは、藤沢和厩舎のグランアレグリアが1番人気に応えて勝利しましたね。今回はこのレース、特にグランアレグリアの調整過程について、お話ししたいと思います。

ご存じの通り、スプリンターズSが行われるのは中山芝1200mです。中山は東京や中京と比べても直線が短く、その点で言えば先行馬有利と思われるかもしれませんが、スプリンターズSに関して言えば、我が尾関厩舎に所属していたレッドファルクス、また古くはトロットスターなど、追い込み馬が勝つケースも意外と多い。グランアレグリアにとっても、中京より向いていたんじゃないか、とさえ思います。

そのグランアレグリア、新聞などで報道されていたのでご存知かもしれませんが、レース前日に美浦の坂路で54秒5-39秒1-25秒5-12秒9という、凄い時計の攻め馬をしていたんですよね。

グランアレグリアについては休み明けでどうなのか、土曜追いをしたのは仕上がっていないからじゃないか、など、さまざまな意見が飛び交っていたようです。今回はなぜそういう調整過程を踏んだのか、あくまで僕自身の経験や感覚によるものですが、その理由を推測して話をさせていただこうと思います。

まず前提ですが、レース前日に強め、具体的には14-14くらいのところまで乗るケースは、理由にかかわらずけっこうあるものなんです。今回は併せた相手などの関係もあって、多少速くなったのではないかと。

そして、前日に強いところをやる理由はいくつかあって、まずはまだ太いとか、あるいは息遣いが本物じゃない時です。

また、精神面の理由で行うこともあります。こちらはいろいろあって、ひとつは気持ちがピリっとしてこない馬に気合いを乗せるため。逆に、気合いが乗り過ぎて、ピリピリしている馬をガス抜きするためです。

ここからは僕の推測ですが、今回のグランアレグリアは、ガス抜きをして、落ち着かせるためだったと思っています。

なぜそう思うか、ということですが、これは消去法です。休み明けで重めという理由ではなかったと思うのは、当週の調教を見ると一目瞭然です。前週の日曜に55-40くらいをやって、火曜に坂路で乗って、水曜日に最終追い切り、木曜は運動のみで、金曜に坂路で15-15を2本。僕の経験から考えても、これだけやっていて、できていないということは考えづらいと思うんです。

次に気合い不足の可能性ですが、それも考えづらい。というのも、グランアレグリアは敏感なタイプで、僕も馬が少ない時間帯に調教で一緒になることがあるんです。そこでさえ、なるべく他の馬と一緒にならないように気を付けられている。そんなタイプの馬が、気合い不足になるのかどうか。

残るのが、ガス抜きです。テンションを高めすぎないように神経を使うタイプということを考えても、落ち着かせることが主眼に置かれた可能性が高いと、僕は思っています。

藤沢厩舎の調教メニューは、馬のテンションとどう向き合っていくか、ということをかなり重視して組み立てられているように思います。テンションの高い馬は、乗り運動をしないケースも多い。そう考えると、今回のグランアレグリアが土曜追いを行った理由も想像がつくわけです。

答えは、機会があったら藤沢厩舎の方に伺ってみたいと思いますが、いずれにしても結果はご存じの通り。さすがは藤沢厩舎、と感服します。

改めて調整過程を見直しても、当該週の負荷のかけ方はかなりハードで、数字だけ見ればオーバーワークか、と思わせるほどでした。

今は乳酸値や心拍数を計測したりして、数字による馬の状態の可視化が進み、時計とともにそこの部分が重要視される傾向にあります。もちろんそれらも重要ですが、それだけでは推し量れないことも間違いなくあります。それが、馬のテンションや雰囲気という、人間の感覚に頼る部分です。

人間は時計や数値のように、可視化されたものに目が行きがちですが、そうではない部分が重要になることもあるんですよね。似たようなことは、皆さんにもあるのではないでしょうか。

数字も大事ですが、馬にも感情や気持ちがあります。前日にやることで、よりテンションが上がってしまえば元も子もありません。特に、敏感なタイプと思われるグランアレグリアには、そのリスクがあります。

コースではなく、角馬場でしか乗らないことでメンタル面を整えるケースもありますが、どれが正解なのかは結果が出ないと分からないわけで、本当に難しいんですよね。

いずれにしても、あえて前日に強い攻め馬を行えたのは、長くグランアレグリアと接してきた陣営が、よく馬を観察した結果だということは間違いありません。本当に凄いことだと思います。

今回のスプリンターズSの結果を受けて、僕自身も同じような仕事ができるように頑張りたいと、強く思うんです。

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