西塚助手
今年のジャパンCはスポーツとしても、興業としても理想的だった
“三冠馬による三強対決"として、競馬ファンはもちろん、世間の注目も集めたジャパンC。結果は1番人気に推されたアーモンドアイが優勝し、引退レースを飾りました。
そのジャパンCには我が尾関厩舎のグローリーヴェイズも出走していて、三強に次ぐ4番人気に支持していただきました。自分も参戦する立場として、ライバルであるアーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトをはじめ、その他のライバルに対しても、それぞれの動向や調教などを意識して見ていました。今回はグローリーヴェイズを中心に、そういった視点でジャパンCを振り返ってみたいと思います。
まず、アーモンドアイについて。天皇賞・秋の後は放牧に出ていて、10日前にトレセンに入厩してきました。その後は中間調教で一緒になることがありましたが、レースへ向けて良い臨戦態勢だな、と感じましたし、端から見ると馬自身の雰囲気も良かったように思います。
天皇賞・秋からは中3週での臨戦です。アーモンドアイ自身、中2週で臨んだ今年の安田記念で2着に敗れており、“間隔が詰まると良くない"とか“目に見えない疲れがあったのでは"と言われたりしましたね。
実際、そういうものは目に見えない、つまり間近で接していても感じることがなかなか難しい。もし目に見えるような疲れがあれば、使わない選択肢もあるわけです。少なくとも、当日のパドックを見る限り、そういったものは感じさせず、やはりかなりの強敵だと思っていました。
次は、2着に入ったコントレイルです。秋3戦目、菊花賞から中4週、中間の調教で併走馬に遅れたなど、その状態に関してさまざまな報道がされていました。これは僕個人の印象ですが、逞しいというより、いわゆる“綺麗なタイプ"というイメージが強いんですよね。パドックを見ても、その通りの印象でした。
そして、3着のデアリングタクト。こちらは秋緒戦の秋華賞を勝って、一旦放牧に出されて、そこからジャパンCというローテーションは予定通りだったのでしょう。実際、ローテーション的には一番余裕があったはずですし、パドックでも充実しているように見えました。
それに対して、グローリーヴェイズは京都大賞典を勝ち、中6週で秋2戦目。予定通り、もしかしたら三強以上の状態で、レースに向かうことができたと思います。
これまでは使った後に食欲などの面で波をみせることがありましたが、今回はそういうこともなく、馬体重も過去最多の464kg(8kg増)で臨むことができました。今回は前日入厩ということで、そのあたりの影響があったのかもしれません。いずれにしても、良い雰囲気で送り出すことができました。
結果は5着でしたが、負けて悔いなし。大外の8枠15番ということで、位置取りに苦労するのでは、という心配がありましたが、川田騎手が見事な騎乗を見せてくれました。直線では一瞬いけるか、と思ったくらいです。確かに悔しさはありますが、力は出し切れたと思っています。
今回のジャパンCは歴史に、そして皆さんの記憶にも残る一戦となったはずです。そこに携わっている馬で出走できたことは嬉しいことですし、僕としても改めて競馬の魅力、そして底力を感じました。
そんな一戦となった要因は、もちろん三冠馬が3頭出走したことです。これはあくまで個人的な意見ですが、競馬というのはスポーツの一面と、興行の一面があって良いと思っています。現代の最強馬たちが力と力の勝負をする、ファンの方々が望むのはどういうレースなのか、各馬の陣営の方々がそれを理解していたからこそ、今回の対決が実現しました。
僕としても、ファンの皆さんあってこその競馬、その意識を忘れてはいけないと思っています。そういう意味では、今回のジャパンCはスポーツとしても、興業としても、理想的だったんじゃないでしょうか。
さて、話は変わりますが、先日根本厩舎のスタッフの方が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。発表がジャパンC当週の木曜ということで、皆さんにもご心配をおかけしたと思います。
これを受けて、いろいろな対策がとられました。根本厩舎は7時開始の調教を4時から行うこととし、調教時間をずらして調教しています。レースについては他の厩舎のスタッフが馬運車に乗り込み、帯同することになりました。
それと同時に、濃厚接触者の方々に対する検査も行われ、陰性が確認されているということです。そういう対応がとられたことで、現状はこれ以上の拡大はないと思われます。
もちろん、まだまだ注意が必要な状況ですが、自分たちはできる限りの対策をして、レースに馬たちを送り出すことで、少しでもファンの皆さんが喜んでいただけるように頑張ります。応援を、よろしくお願いいたします。
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