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西塚助手

大久保師の処分取消について、分かりやすく説明します


去る3月5日、JRAが大久保龍志師に対して昨年7月17日に課した、過怠金30万円の処分を取り消したことについての発表がありました。

ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんので、JRAのサイトに掲載されたニュースの概要を抜粋したいと思います。

2020年7月12日、第4回阪神競馬第4日第4競走に出走したトロイカ(牡3(当時)、大久保龍志厩舎)の検体から規制薬物である消炎・鎮痛剤「ジクロフェナク」が検出され、日本中央競馬会競馬施行規程第147条第14号(開催執務委員の命令・指示違反)により、同馬を管理している大久保龍志調教師に対して過怠金30万円を課した件につきまして、トロイカが競走当日に阪神競馬場で使用した馬房を前日(2020年7月11日)に使用していた別の競走馬が、その馬房内で治療のためにジクロフェナクの投与を受けていたことが判明しました。さらに、規制薬物を競走馬に対して投与した場合、JRAが敷料の交換を含む当該馬房の清掃を行うところ、それが適切に行われていなかったことが併せて判明しました。

その結果、この別の競走馬に投与されたジクロフェナクが何らかの形で馬房内に残留し、翌日にトロイカがこれを摂取したことにより、検体からジクロフェナクが検出された可能性が否定できないことから、大久保龍志調教師への処分を取り消すことが適当と判断しました。(後略)

SNSでは、これでもよく分からない、という声があったようです。実際、ファンの皆さんも状況が分かりづらいと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、今回はこの件がどういうことなのか、僕自身の経験を踏まえて説明させていただきたいと思います。

まず、今回の件で検出された“ジクロフェナク"という薬についてですが、消炎・鎮痛剤としてはかなりポピュラーで、よく使われるものなんです。

このジクロフェナクは“規制薬物"に指定されています。これは治療を目的に施用される薬物で、競馬法に定められた“禁止薬物"のような競走能力への影響はないとされています。

規制薬物に指定されているのによく使うというのは、矛盾しているように思われるかもしれません。この薬は残留期間が1週間程度とされていて、レースの1週間前に投与を止める形で使用されている、ということなんです。

そして、どのような場合に使うかというと、簡単に言えば痛み止めで、挫石した時や、あるいは骨折した時などに使います。錠剤タイプの薬で、水に溶かして飲ませる形で投与するのが一般的です。

これはトレセンでもよく使うのですが、これを馬房で投与してしまうと、今回のようなケースが起こり得ます。ですから、我々厩舎関係者はジクロフェナクに限らず、経口によって薬を投与する時には敷料(寝わら)などに付着しないように気をつけるんです。基本的には、洗い場で投与するようにしています。

ただ、このケースはトレセンではなく、競馬場で起こりました。今回の話を聞いて自分自身に置き換えると、同じような事が起きても不思議じゃないな、という印象で、身につまされる思いがしました。

競馬場でジクロフェナクを投与する時は、レース後に歩様に異常をみせている、あるいは脚が腫れているなど、何らかのケガをしているはずです。今回で言えば、前日にレースのためにそこの馬房に入っていた馬が、レース後何らかの事情によってジクロフェナクを投与されていたわけです。

実際、こういうケースはしばしばあって、僕も経験があります。レース後に跛行を起こしたり、あるいはレントゲンでは映らないのに脚が腫れてしまった、ということになれば、即ジクロフェナクを投与、という感じです。

そして、もし自分の担当馬が競馬場でそうなった際に、洗い場に出しているかと言われれば、出さないケースの方が圧倒的に多いと思います。なぜかというと、馬もどこか痛みがあってそういう状態になっているわけですから、馬房から洗い場まで歩かせるのはできるだけ避けてあげたいと思うものなんですよ。

そこで今回の件ですが、そういった形で前日に馬房の中で投与された薬が何らかの理由で敷料に付着して、翌日のレースに来たトロイカがそれを食べるなどしたことで、摂取してしまった可能性がある、ということのようです。

ただ、これは清掃を適切に行い、敷料を替えていれば防げます。自分としても、そういったことは当然行われていると思っていますから、自分がその馬房を使ったとしたら、同じケースが起こっていたと思います。

そう考えると、今回のようなことを避けるためには、やはりできる限り洗い場で投与すべきなのか、でも痛がっている馬を歩かせるのはかわいそう。悩ましいところです。

結局のところ、競馬に携わるすべての人間が自分の役割をしっかりとこなす、という基本的なことを怠りなく行うしかないんですよね。自分も気をつけなければ、と改めて思います。

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