西塚助手
アスリートの誹謗中傷問題から考える、競馬とSNSの付き合い方
去る8月8日、東京オリンピックが閉幕しました。日本は金メダル27個をはじめ、過去最多となる58個のメダルを獲得する結果になりました。
一方で、残念な話題もありました。そのひとつに、選手個人のSNSに対して、さまざまな誹謗中傷が相次いだことがあります。それはメダルを獲得した選手、残念ながら獲得できなかった選手それぞれに対してあり、今後は刑事事件にまで発展する可能性があるケースもあるそうです。
競馬の世界でも、調教師、騎手、我々厩舎スタッフのような厩舎関係者、馬主さんやクラブ法人、牧場関係、この連載を行っているサラブレ編集部などのマスコミ関係者など、さまざまな立場の方がSNSをやっていて、その投稿が話題になることがあります。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、僕自身もツイッターのアカウントも持っています。そういったこともあって、この件についてはいろいろなことを考えさせられました。
SNSでは、いわゆる“炎上"のリスクがつきまといます。僕に対して直接誹謗中傷のメッセージが来た経験はまだありませんが、今後もそういったことがないとは言い切れません。
しかし、競馬はその競技の性質上、SNS上だけに限りませんが、僕たち関係者に対していろいろな批評、批判があることも承知しています。僕のような立場の人間であっても、まったくあずかり知らぬところで、いろいろなことを言われた経験があるんですよね。
命に関わるような発言、犯罪予告などは論外で、そういった発言は絶対にあってはなりません。ただ、ここからはあくまで僕個人の意見であって、他の関係者もみんなが同じ考えではない、ということを前提として読んでいただきたいと思います。
競馬は正解を見つけるのが難しい、というのは僕自身がよくこのコーナーで言っています。ファンの皆さんもいろいろな考え方があるはずで、あの条件のレースに使った理由は何なのか、なぜ逃げなかったのか、なぜあそこを突いたのか、というような書き込みがSNS上にあったとしても、それは仕方がないことなのではないかと思っています。
競馬の場合、ファンの皆さんの多くが馬券を購入されています。馬券を購入するにもいろいろなアプローチがあるはずで、そういう部分も含めて競馬の楽しみ方じゃないか、と考えていただいてもいいんじゃないか、と思うんですよね。
たとえば内を突いたものの、前が詰まってしまったケースがあったとしましょう。競馬はセパレートトラックで走る競技ではありませんから、そういうことは少なくありませんし、仕方のないことではあります。
しかし、そういったケースの当事者になると、我々厩舎関係者であっても、何とかならなかったのだろうか、という思いを抱きますし、悔しさも残ります。ですから、馬券を購入している方々だって同じように悔しさを感じるでしょうし、その気持ちは僕にも分かります。その気持ちを表現する書き込みというのは、常識的な範囲内であれば、あっていいんじゃないかと思うんです。
それ以外でも、なぜこの距離を使うのか、なぜこの騎手を乗せるのか、というような疑問を感じることもあるはずです。そういった疑問をSNSで共有して、それを見た関係者が理由を説明する、ということがあれば、さらに理解が深まるはずです。それは、正しいSNSの使い方ではないかと思うんですよ。
また、SNSに関してもうひとつ思うことがあります。情報を発信する側もよく考えて始めるべきですし、始めた以上は簡単に止めるべきではない、とも思います。
誹謗中傷は論外ですが、根拠に基づく批判であれば、その言葉の意味や、相手の考え方に耳を傾けてみるくらいの余裕があっていいんじゃないかと思うんですよ。
僕自身も、SNSでのいろいろな書き込みを見ながら、僕にはなかった考え方に気づかされることも少なくありません。そういった意味で、このコーナーとツイッターは僕にとって大切なツールのひとつだと思っています。
皆さんから頂いたメッセージは必ず見ていますので、これからも感じたことがあれば、気軽に送っていただければと思います。
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