西塚助手
折り合いを付けるということは､一朝一夕にはいかないんです
先週はお休みをいただき､ご迷惑をおかけしました｡
僕の記憶だと､落馬や試験のために休むことはありましたが､体調不良でお休みをいただくのはあまりなかったと思います｡実は新型コロナウイルスのワクチンを接種した際の副反応で､高熱が出てしまったんです｡
接種したのが先月29日(日)｡当日は大丈夫だったのですが､翌日から39度近い高熱が出て､その影響が火曜まで残ってしまいました｡僕自身はそんな状況でしたが､僕が所属する尾関厩舎のスタッフも例外ではなく､1名を除いて何らかの副反応があったようです｡
その前後でも美浦､栗東で何人か陽性が確認されていたので､僕も罹ってしまったと思われているのでは､と少し心配していました｡おかげさまで､水曜にはまったく問題なくなりましたので､改めてよろしくお願いいたします｡
今回は､先週触れたいと思っていたことについて､話をさせていただきます｡以前募集させていただいた質問については､次回にお答えしたいと思っています｡僕に対する質問は引き続き募集していますので､こちらからお送り下さい｡
話をしたかったのは､29日(日)に行われたキーンランドCにおいて､1番人気で7着に敗れたメイケイエールについてなんです｡
レース後､メイケイエールに騎乗していた武豊騎手は､“難しい馬"というコメントを残されたそうです｡メイケイエールに限らず､ひとクセあって､その対応に人間が頭を悩ます馬は多いんです｡
僕たち厩舎スタッフや騎手の皆さんは､そのような馬に対してどのような方法で対応していくのか考えなければいけません｡このコーナーでもよく言っていますが､それが本当に難しいです｡
僕はメイケイエールに接しているわけではありませんが､一般的にレースで引っ掛かってしまうことが課題になっているとき､大きく分けてふたつの方法があります｡それは､引っ掛からない状況を作り出す(悪癖をやらせない)方法と､敢えて引っ掛からせた上で直していく(悪癖をやらせて修正する)方法です｡
前者は､ハミなどの道具を変えてみたり､馬の少ない時間に乗る､ゆっくり走る練習をする､なるべく併せ馬をしない､などが挙げられます｡後者は､たとえば馬の後ろに入れたり､併せ馬をするなど､敢えて引っ掛かる状況を作りながら､それでも折り合うように教えていきます｡
ただ､後者の方法をとると､余計に悪い方向に行くことがあります｡それに､引っ掛かる状況の中で乗り手が簡単に教えることができたら話は早いんですが､そう簡単にはいきません｡
そこで､今回は僕が見たところ､陣営は前者､つまり引っ掛からない状況を作り出すアプローチを取ったように思えます｡もちろん､それはそれで一朝一夕に結果は出ません｡僕は馬の成長と経験とともに良くなっていくのではないか､と見ています｡
レースで毎回同じように引っ掛かっている馬に対して､なぜ対応できないのか､という厳しいご意見もあるようですが､対策を講じたからといってもすぐに効果が出ないことも多いですし､試行錯誤も必要になります｡また､そういうひとクセを改善してしまうと､途端に走らなくなってしまう馬がいるのもまた事実なんですよね｡
そして､調教で我慢できても､レースではまだできない､という馬も多いんですよ｡だからこそ慎重に､馬のリアクションを見逃さず､徐々に進めていくことが必要になるんです｡
過去の例では､サイレンススズカも3歳時はゲートで難しい面があり､レースでも掛かる面を見せていましたが､成長してからは連戦連勝で､今でも日本最強馬に名前が挙がるほどの名馬に成長しました｡メイケイエールも､今回は結果が出ませんでしたが､次走以降どこかで折り合いを付けられるようになる可能性があるはずです｡
メイケイエールも能力があるのは間違いないわけで､それを存分に発揮させるために､人間も尽力しています｡ファンの皆さんもそういった背景があることを知っていただき､少し長い目で見守っていただければ､と思います｡
話が変わりますが､21日(土)の新潟7Rで9着だったレディアイコの去就が決まり､岩手へと移籍することになりました｡
前走後､僕も繰り返して21日のレース映像を見ました｡正直に言って､4コーナーを回ってくる姿は母父のオグリキャップにもダブって見えたんです｡その姿は､僕も絶対に忘れません｡JRAでは2回しかレースをすることができませんでしたが､本当によく頑張ってくれてありがとう､と言いたいです｡
この場をお借りして､このコーナーを読んで出資していただいた皆さん､応援してくださった皆さん､ローレルクラブの関係者の皆さんにお礼を申し上げると同時に､本当に申し訳ありませんでした､とお伝えさせていただきたいと思います｡
今後は岩手競馬で走ることになると思いますが､今のルールだと､地方競馬で3勝を挙げることができれば､中央に再転入することができるようになります｡もしそういう可能性が出てきたときには､改めてお話をさせていただきたいと思います｡引き続き､応援をよろしくお願いします｡
| ※西塚助手への質問､｢指令｣も募集中｡競馬に関する質問､素朴な疑問をお送り下さい! ｢こんな人と対談してほしい｣などのリクエストも歓迎です! |