西塚助手
紫苑S回顧&皆さんからの質問にお答えします
先週は秋華賞トライアルの紫苑Sが行われ、僕が所属する尾関厩舎からはスルーセブンシーズ、メイサウザンアワーの2頭が出走しました。そのうち、スルーセブンシーズが2着に入り、優先出走権を手にしました。
スルーセブンシーズについては、僕自身も入厩した当時から“衝撃を受けた"という話をしていましたね(※5月19日更新記事、5月26日更新記事)。2勝馬の身で挑んだオークス(9着)から一旦放牧に出て、この一戦に挑みました。
3歳馬が夏の放牧を経て帰厩と聞くと、イコール成長して帰ってくる、と思われる方が多いと思いますが、必ずしもそうではなく、良さがなくなってしまう馬もいます。しかし、スルーセブンシーズについては順調に成長してくれたことがはっきり伝わってきていて、春の時点で既に見せていた抜群の切れ味に加えて、馬体その他が全体的にしっかりしてきた印象を受けました。
実際にレース前、うちの矢原さんが調教に乗っていると、他の調教師さんから「その馬、すごくいい走りをするね」と声をかけられたそうです。
メイサウザンアワーもスルーセブンシーズと甲乙つけがたいくらい良い馬ですし、僕自身はどちらが勝ってもおかしくないな、と思って見ていました。
結果はスルーセブンシーズが2着、メイサウザンアワーは6着でした。確かに、勝って本番を迎えたかったですし、まだいろいろな課題もあります。しかし、次は休み明けを叩いた上積みに期待できると思いますし、本番での前進を期待して、スルーセブンシーズの力を信じて、精一杯のことをやって送り出したいと思っています。
さて、ここからは前回予告していた通り、皆さんからいただいた質問にお答えしたいと思います。皆さんのメッセージは、質問に関する部分を抜粋して掲載させていただきます。
西塚助手ファンさん
「先日、横山典騎手の返し馬に関する記事を見ながら思ったのですが、返し馬を見て、この馬は走りそう、逆にどうも走らなそうだと感じる特徴のようなものはあるのでしょうか。個人的には、首をぐっと下げて走る馬は好走することが多く、逆に返し馬の途中で頭を左右に振って騎手に反抗する馬は凡走する事が多い気がします。首をぐっと下げて走る、あるいは待機所でぐっと馬が頭を下げるような動きをするのは、馬が走りたい、調子が良いという気持ちの表れなのでしょうか」
「先日、横山典騎手の返し馬に関する記事を見ながら思ったのですが、返し馬を見て、この馬は走りそう、逆にどうも走らなそうだと感じる特徴のようなものはあるのでしょうか。個人的には、首をぐっと下げて走る馬は好走することが多く、逆に返し馬の途中で頭を左右に振って騎手に反抗する馬は凡走する事が多い気がします。首をぐっと下げて走る、あるいは待機所でぐっと馬が頭を下げるような動きをするのは、馬が走りたい、調子が良いという気持ちの表れなのでしょうか」
これは個人的な考えですが、返し馬単体を見ても、その善し悪しを評価するのは難しいと思います。
確かに、頭を下げている、あるいは上げているかどうかをチェックするのはもちろんアリだと思います。ただ、頭を下げて集中した走りができていれば良いことだとは思いますが、実際は元気がないだけ、という可能性もあります。そう考えると、返し馬だけで善し悪しを判断するのは、とても難しいことなんです。
馬の状態は、その馬の普段の様子がどうなのかを把握していないとわかりづらい。ということは、その馬に普段から携わっている人たちでないと把握しづらいと思います。さらに言えば、普段から接している人でさえ、完全に把握することは難しいのが現実です。
また、返し馬のやり方については、もちろん馬の状態や、その個性が出る面もあるとは思います。ただそれだけではなく、騎手の皆さんが実際に乗った感覚や、馬にどうアプローチしていくのか、という部分も、実はとても大きいと思います。以前話をしましたが、その騎手がどのようにレースに向かうか、という意識が返し馬に表れていると思うからです。
皆さんの立場で考えると、返し馬はその時だけ、要するに点で評価するのは難しく、以前はどうだったのか、線で見て評価する必要があると思います。
騎手それぞれに理想とする返し馬へのアプローチがあると思いますので、騎手で追っていく見方の方が比較がしやすいと思います。
ノリさん(横山典騎手)で言うと、以前話をした時はゴール板を過ぎ、ラチに向けてしっかりと歩かせていました。しかし、同じ馬にノリさんが乗っていたとして、馬場入りしていきなりキャンターに下ろしたら、明らかに違うわけですよね。その違いをどう見るか、ということです。
話が少し逸れますが、返し馬について僕たち現場がどこを見ているのか、という話もさせていただきます。それは、馬場入りしてキャンターに下ろす1歩目で、そこがもっとも気を遣うところなんです。なぜかというと、そこでのアクシデントがとても多いからなんですよ。
本来、馬場入りは馬番の順に入ることになっていますが、何か理由があれば、先出し、後出しが認められています。たとえば、馬場入りを待つことが苦手な馬ならば、先に入って1頭で返し馬をしてしまいたいですし、逆に馬がいないとダメな馬が馬番1番を引いた時は、前に馬をおいて出ていく、というような感じです。
ですから、返し馬についての僕たち現場の感覚は、まずは無事に馬場入りして、無事に1歩目を踏んでキャンターに行く、というところが重要なんですよね。
レイスさん
「自分は馬券を買うときに体重の増減等を参考にするので、勝負飼い葉について知りたいです。追い切り後や休みの日、競馬後、競馬後の量や与えている物なども知りたいです」
「自分は馬券を買うときに体重の増減等を参考にするので、勝負飼い葉について知りたいです。追い切り後や休みの日、競馬後、競馬後の量や与えている物なども知りたいです」
最初に勝負飼い葉について、話をさせていただきます。これはレース直前に与える飼い葉のことで、これについては消化と吸収の問題がありますので、一般的にはレースの6時間前くらいには食べ終えているのが良いとされています。
たとえばその馬が1レースに出走する場合、だいたいレースの時間が10時ですから、4時までに食べ終えるのがベスト。となると、2時から3時くらいに与える感じになります。量については、馬にもよりますが、1kgから1.5kgくらいが目安ではないでしょうか。
また、追い切り、そしてレースに向かう段階では、基本的に量を減らすことはしません。逆に、レース直後に運動のみ行う期間は、タンパク質が多い濃厚飼料などの量を減らして、草を増やすようにしています。
ただ、レース前だと飼い葉の量自体は減らしませんが、レースの前々日くらいから乾草の量は減らしていきます。乾草は文字通り乾燥した草ですので、当然水分を吸収して、お腹の中で膨張します。するとお腹が膨れてしまって、動きに影響を与えるとされているからなんです。
実際、追い切りが水曜日だとすれば、その直後からレースに向けて乾草を減らす、あるいは全く与えないケースもあります。
G1だと木曜日に追い切り直後の馬体重が発表されていますが、そこからレースの直前になって、10kgくらい減っている馬もいますよね。そういう馬は、毎回そうなることが多かったりするように思うのですが、その理由は馬の個性だけでなく、その厩舎の飼い葉の与え方もあるような気がします。これは何の証拠もありませんし、あくまで個人的な感覚ですが。
皆さんも毎日体重を量る方は、あれを食べた後は体重が増える、ということがあるかもしれません。厩舎で働く僕たちの感覚としては、馬も与えるものや量によって、意外なくらい馬体重の数字に大きく表れる、ということもあるんですよ。
今回については、ここまでとさせていただきます。僕自身がしっかりと調べた上でお答えしたい質問もあるので、それは次回以降にお答えします。ですから、他にご質問があれば、引き続きお送りください。
最後になりますが、今週は調教師の一次試験が行われます。僕も精一杯頑張ってきたいと思っています。結果については改めてご報告させていただきますので、よろしくお願いいたします。
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