西塚助手
グローリーヴェイズで挑んだオールカマーの振り返りと、笹倉先生の訃報に接して
先週、僕が所属する尾関厩舎のグローリーヴェイズが、オールカマーに出走しました。春の香港から5ヶ月ぶりの復帰戦で、3着という結果になりました。
レッドファルクスやサクラゴスペルの時にも同じような話をさせていただきましたが、このクラスの馬になると、馬自身が人間の力を超えた部分を見せてくれることがあります。オールカマーの結果を受けて、今回もやはりそういう思いを強くしました。
馬体重は、前走から12kg増の464kgでした。この点に関しては、いつも馬を見ている人間でも意見が分かれるところで、このくらい立派でもいいという意見もありますし、僕個人としては少し余裕があるかもしれないな、という印象でした。
もちろん、それでも良い勝負をしてくれるはず、という思いで送り出しましたし、実際に頑張ってくれました。
スタートでは出遅れてしまいましたが、3コーナー手前から大外を通って追い上げる競馬になりました。このミルコ(デムーロ騎手)の騎乗に対して、仕掛けが早かったのでは、などの批評があるようです。しかし、出遅れてしまった状況の中で、ペースなどを判断した上でのことでしょうし、決して雑な競馬だったとは思いません。負けてしまえば批判も出てきますが、勝っていたらファインプレーとなるわけですから。
馬は本当に頑張ってくれましたが、負けてしまったわけですから、もちろん悔しいです。しかし、現場で馬に携わっている僕の立場からすると、騎乗云々より、馬自身のデキや動きなどを振り返り、出遅れてしまった原因があれば修正する。そういったことの方が大事です。
次はさらに良い結果を得られるように、頑張っていきたいと思っています。
先週はもうひとつ、触れておかなければいけない出来事がありました。93年オールカマーをはじめ、重賞を3勝したツインターボなどを管理された笹倉武久元調教師が、22日に亡くなられました。
笹倉先生とは僕個人としても付き合いがありましたし、本当に大好きな先生で、現役中にもいろいろお世話になりました。人によっては取っ付きづらい印象を与えることもあったかもしれませんが、僕と会えば『頑張っているか』とか、『元気か』と、笑顔で声をかけていただいたことを思い出します。
僕がこの世界に入りたての頃、父が入院していたのですが、僕はまだ臨場の資格がありませんでした。そんな時にも、『困った事があったら何でも言えよ』と、嫌な顔ひとつせずに手伝ってくださったんです。今振り返っても、本当に感謝しかありません。
もちろん、元々僕の父との付き合いがあって、その縁もあったからだろうとは思います。それでも人として決して間違ったことはされませんでしたし、温かみのある方でした。
覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、笹倉先生は11年4~5月にかけて、対談に登場していただいたこともあります。僕も改めて読んでみたんですけど、1、2を争う面白さがあるように思います。
古い記事なので写真が残っていないのですが、記事はこちら(①、②、③、④)になります。改めて対談を読み返すと、僕が最後に“親父と飲んでいる気分になりました"と言っています。父が亡くなって5年ほど経った時の対談ですが、終わって本当に清々しいというか、温かい気持ちになったことを鮮明に覚えています。
今話題のウマ娘にも登場するツインターボの話も伺っているので、ぜひご覧ください。
僕たちがいるのは競争の社会ですから、結果は大事です。笹倉先生ご本人が仰っていますが、先生のやり方は、もしかしたら今の時代には合わなかったのかもしれません。しかし、それがすべてではないはずで、古いものや習慣のなかにも、良い部分は絶対にあるはずです。今回、笹倉先生の訃報に接して、改めてそういう思いを強くしました。
最後になりますが、ご冥福をお祈りいたします。
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